従弟を嫌いになったきっかけ

最近は別になんとも思ってないけど、ぼくが従弟を好かなくなったきっかけを思い出した。

ぼくが小1ぐらいの頃、従弟は幼稚園児だったか。その頃ぼくは、学研の英語の教材をとってた。その中で「アルファベット26文字分のスタンプセット」が届いた月があった。
ゴムで出来てて、付属の朱肉みたいなのがあったのかな。とにかくスタンプだ。

そのスタンプセットは箱に入って届いて、中にはスタンプのサンプル印影が印刷されてる一枚の紙切れが一緒に入ってた。

上の画像の商品はあくまでイメージ。その学研の教材のオマケのヤツは木製の部分はなくて、例えば「A」なら「A」という形をしたゴムだけ、というモノだったと記憶している。普通のハンコぐらいに細長く長さがあって、押しやすくなってる感じだ。文字ごとにゴムの色が違ってカラフルだったと思う。

ある時親戚の集まりにそのスタンプセットを持って行ったら、目を離した隙に従弟にそのスタンプセットを使われてた。そして付属の紙切れにいっぱいスタンプが押されてて、まぁ紙切れはグチャグチャになってた。

幼心に「スタンプ本体ではないとはいえ、この紙切れだって非売品で、同じものは二度と手に入らないはずだ」ってことは分かってて、紙切れだけど、自分の大切なものを壊されて悲しくなった。

伯父さんは「従弟を見てなくてごめんね、従弟もわざとじゃないんだ」と謝ってたが、わざとじゃなくてもぼくの大事なものは取り返しがつかない所まで汚されたんだ。

やり場のない怒りでどうしようもなく悔しくなって、汚されたその紙切れを自分でビリビリにやぶいた。

たぶん「汚されたならもう要らない!」という気持ちと、「破いたのは自分だからそういうことで自分の中で処理しよう」と考えての衝動だと思う。でもやり場のない悔しさは解消できなくて、一人で泣き続けた。

その紙切れはそのあとセロハンテープで裏から止めて修復させた。スタンプセットの箱を開けると、デタラメにスタンプが押されてる上にビリビリに破られた紙がフタになって出てくる。もうその紙切れをどかしてスタンプで遊ぶ気なんてなくなった。

従弟を嫌いになり、スタンプセットは机にしまった。

最終的にスタンプセットをいつ捨てたのか、今となっては何の記憶もない。

従弟をいつ許せたのかは分からないけど、一方的なわだかまりもいつしか忘れ、中学だか高校だかになった頃には会えば普通に話すようになってた。

元々従弟はおとなしい性格だから趣味が合わなくて積極的に話もしないんだけど、それ以上に今も残る従弟への違和感は、あの時大切にしてたスタンプセットの付属の紙切れを汚されたからだったな、と思い出した。

なんて小さな理由で怒る男なんだ……。器の小ささよ…。