メキシコ人に頼まれて角松敏生のギタータブ譜を書いた話

メキシコ人に頼まれて角松敏生のギタータブ譜を書いた。

目次

経緯

大学に入った頃、角松敏生の Oshi-Tao-Shitai という曲をギターコピーした動画を YouTube にアップした。

それ以来何曲か角松敏生のギターインストをコピーしては拙い動画をアップしてきた。


先日、Twitter に DM が届いた。メキシコ在住のユーザからで、

といったお願いだった。

角松敏生のバンドスコアはある?

角松敏生の楽曲の楽譜・バンドスコアは、過去に販売されたものはあったが、現在はどれも絶版。特に、ギターインストの「Sea Is A Lady」や「Legacy Of You」の楽曲を網羅したバンドスコアは存在しない。

現時点で入手できるのは、「The Best Of Fusion」というバンドスコアに掲載されている「Sea Line」(Sea Is A Lady の1曲目) ぐらいだろう。

というワケで、自分が YouTube に投稿していた動画は、全て耳コピで弾いたものだった。

ぼくはどうやってギターを耳コピしているか

Twitter DM をくれたメキシコの人はギターを始めたばかりの人らしく、「耳コピだとしたらどうやって聞き取ったんだい?」と質問していた。

彼からはもちろん英語で質問されているので、拙い英語で、「Windows Media Player で曲をスロー再生して、1音流したら止めて、その音を指板から拾うのさー」と回答した。

実際、僕はそうやって音を拾っているのだが、それ以外にできそうな取り組みがいくつかあるので紹介しよう。

本人のライブ動画を沢山見る

一つは、本人がギターを演奏しているライブ映像を沢山見るということ。これはコピーしたい楽曲そのものでなくても良いので、とにかくたくさん見る。

そうすると、その人が好んで弾くポジションや手癖がだんだん見えてくる。

例えば角松敏生の場合は、

というのが大きな特徴。だもんで、「角松がよくやるリフ・フレーズ」を一つずつコピーしていって適当に繋ぎ合わせると、彼の場合案外それっぽくなる。

細かなところでいえば、

といったところが、自分なりの見解。

角松の場合、ギターは本職ではなく、単にテクニックだけで言うともっと上手なギタリストは沢山いる。「音をなぞれればいい」ぐらいの目線でいえば、楽曲の難易度もそう高くないほう。ただ、逆に速弾きやスウィープといったテクニック面ではなく、「角松っぽいニュアンス」を出して弾けないとそれらしく聞こえない。

…これはあくまで一例で、ギタリストによって色んな特徴があるし、これといった特徴がなく万能なスタジオ・ミュージシャンタイプもいたりするので、そのギタリストの演奏を動画付きでたくさん見ていくしかない。

他人の「弾いてみた」動画を参考にする

自分なりに本人の動画を見て勉強はしたものの、イマイチ…という時は、他人がアップしているコピー・カバー動画も見てみる。

人によっては残念なクオリティの動画もあるが、自分にはない解釈でその曲を弾いているのを見ると、コピーする際の運指のアイデアも広がったりする。

僕はコードの耳コピが全然できないので、他人の動画からコードのフォームを参考にすることが多い。コードの名前も正確な形も分からないまま、「7フレットあたりで指が並んでるなぁ」ぐらいの感じで真似する。

だいたいギターが弾ける和音なんて、ピアノなんかと比べたら最初から「省略コード」なので、深刻に考えなくていい、というのが僕の考え。5弦ルートのマイナー 7th の時に4弦を鳴らそうが鳴らすまいが、大して変わらない。アンサブルの中に混じってジャカジャカ弾くだけならそれっぽいテンションコードの音が出せてればいいと思う。

これが通用しないのが「アルペジオ」のフレーズで、こればかりは頑張って聞き取るしかない。

耳コピする時に使うフリーソフト

さて、あとは頑張って楽曲から耳コピするしかない、となったら、文明の利器に頼っていこう。

先程も書いたが、僕の場合、基本は Windows Media Player で再生速度 50% のスロー再生にして聞き取っていく。スローにすると音が濁るので、50% 再生である程度フレーズが聞き取れたら、60%・70% と再生速度を上げていって、不自然でないかを確認する。

また、左右のチャンネルに別れてツインギターになっているような楽曲は、「Reaper v0.999」というフリーソフトを利用して、片方のチャンネルを L・R 両方で流すように音声ファイルを加工している。やり方は以下のとおり。

  1. トラック1に音楽ファイルを配置する。
  2. トラック1の、トラックの設定 (タイムラインの左側) で、左チャンネル全開に振る。
  3. トラック1を複製してトラック2を作る。
  4. トラック2の楽曲ファイルを右クリックし、「アイテム設定」から「チャンネルモード: ステレオ反転」を選んでステレオチャンネルの左右を反転させる。
  5. トラック2のトラックの設定で、右チャンネル全開に振る。

これを書き出せば、左チャンネルオンリーの音声ファイルになる。2つのトラックのパンを左右逆転させれば、右チャンネルオンリーの音声ファイルも作れるので、コレで左右別々に耳コピすれば良い。

その他

コードのコピーに関する話の中でも触れたが、素人が真似する程度の「弾いてみた」クオリティでよければ、ある程度の精度を犠牲に、全体を通しで弾けるようになった方が良いかと思う。1曲通しで弾けないと、何かお披露目する場面でも演奏しづらいので…。

ツインギターとか、物理的にコピーしきれないところは、大抵は高音側を弾いているギターをコピーしておくとそれっぽいかと。余裕があれば一人で両方弾く (2音の和音にする) のも、それっぽく聞こえればアリかと。

あとは、別の楽器のソロパートもギターでコピーしてみるとかすると、コードやスケールの知識がなくても、なんとなくコード進行や使って良いスケールが見えてくる。サックスなんかはギターであまりやらないメロディ・運指が多いので、新しい刺激にもなる。

「52nd Street」のタブ譜を起こした

さて、件のメキシコ人の話に戻る。

彼に「どの曲のタブ譜が欲しいの?」と聞くと、「52nd Street」のタブ譜が欲しいという。

僕はこの曲を通しでコピーしたことがなかったので、今回新たに耳コピした。

2本のギターで弾く部分が多く、完コピではないが、1本で弾く時のそれっぽい位置をひととおり押さえられた。タブ譜はテキストで、ホントに弦とフレット位置だけ示した簡素なモノ。スキルがあるなら Tux Guitar あたりの専用ツールでタブ譜を作る方が良いかと。

タブ譜のテキストを送ったりするのが面倒臭いので、当時は CodePen に貼り付けて公開した。現在は GitHub Pages に配置している。

以上

メキシコ人に連絡すると、楽譜をとても喜んでいた。「動画もアップする?」などと聞かれたので「そのうちね〜」と答えておいた。

何気なく公開した YouTube 動画を見てもらって、メキシコの人に影響を与え、その人のおかげで久々にギターを弾けたりして、なんかインターネットっていいな…とか思ったりする一件だった。