Netflix ドキュメンタリー「グレート・ハック SNS 史上最大のスキャンダル」を観た
2019年の Netflix オリジナル・ドキュメンタリー。
2016年、アメリカ大統領選挙で、共和党のトランプ陣営が民主党のヒラリー陣営に勝利し、トランプ大統領が誕生した。この出来事の裏側では、「CA : Cambridge Analytica ケンブリッジ・アナリティカ」というコンサル会社が多大な影響を与えていたという。
CA 社は、トランプの宣伝キャンペーンを「プロジェクト・アラモ」と名付け、Facebook 上などであらゆるネットマーケティングを実施してきた。具体的には、「マイクロ・ターゲティング」という手法が用いられた。Facebook を始めとする SNS からユーザの行動履歴を取得・分析し、ある選挙区内の有権者のうち、中立的な人や選挙自体に消極的な人 … 「説得可能者」を探し出す。そして彼らに対し、最適な広告を見せるよう操作していたのだ。ドキュメンタリーの中では、「5000種類のデータがあれば、米国民の性格を予測できる」と表現されていた。
CA 社はトランプ以外にも、イギリスの EU 離脱、いわゆる「Brexit ブレグジット」運動にも関わっていたとされる。CA 社は中立なコンサル企業ではなく、特定の思想・世論に誘導するプロパガンダのために、個人のデータを悪用していたのではないかと疑うのが、本ドキュメンタリーの主旨だ。CA 社元幹部のブリタニー・カイザーなど、内部告発者やジャーナリストの証言を交えて構成されている。
自分は企業の SNS アカウントを業務で扱った経験もあるので、技術的に、SNS 利用者の情報をどれくらい簡単に取得できるのかというのはまぁまぁ知っているつもり。そこから行動パターンや思想を分析して広告配信していく、というマイクロ・ターゲティングも、「そこまでやるか?!」と思うと同時に、「物凄く大変だろうけど、不可能でもなさそう…」と思わされる話ばかり。
選挙の結果が CA 社のマーケティング活動だけで変わったとは思いづらいし、このドキュメンタリーで描かれている内容が全て真実なのかどうかも疑わなくてはならないと思う。しかし、ネット上に散らばる個人の情報を、このまま認識しないでい続けたら、これからも CA 社のような組織によって悪用される事態は想像に難くない。ドキュメンタリーの中では、「データも基本的人権の一つと捉えられるようになるべき」とされており、SNS 等を通じて企業が収集するデータの扱いがより重要視されていくことだろう。