映画「Mr. Nobody ミスター・ノーバディ」を観た

2009年の映画。フランス、ドイツ、カナダ、ベルギーの合作。

舞台は2092年の未来。人類は科学技術によって不死の力を得ていたが、主人公のジャレッド・レトは、そんな人類の中で最後の「死を迎える人間」として世界中から注目されていた。

118歳の彼は死を目前にして、自分の過去を振り返る。9歳の頃、親が離婚して父についていった、いや、母についていった?近所に住む女の子、ジーンと、いや、エリースと、いや、アンナと、恋仲になったり、ならなかったり。

…彼が語る人生は、あらゆる瞬間で分岐し、「あんな人生だったかも」「こんな人生だったかも」と次々に語られる。

「結局どの人生が本当に歩んだ人生だったのですか?」

取材に来ていた記者が尋ねるも、彼はついに亡くなってしまう。

彼はどれかの選択肢を取ったのかもしれないし、どの選択肢も取らなかったのかもしれない…。


…とまぁこんな映画。あらすじをこれ以上書くのは難しいくらい、本当に様々なパターンのシーンが描かれている。

見事なのは、これだけ色々な場面が脈絡なく繋がっているように見えるのに、それぞれのシーンはちゃんと前後関係が読み取れて、「何がなんだか分からない」とはならないところ。登場人物の服装や、小物、背景に至るまで、緻密に計算されているから、複雑な分岐も混乱せずに観られるのだろう。

どの選択肢が「正解」、というモノはないと思うのだが、主人公的には「アンナ」と結ばれることを一番望んでいたのかな、と思われる。実際に結ばれたのかは明らかにはされないが、なんともいえないカタルシスを得られる映画だった。