Netflix でロス暴動事件のドキュメンタリー「LA92」を観た

2017年のドキュメンタリー。1992年に発生したロス暴動から25年という節目で作られたみたい。

冒頭は1965年に起きたワッツ暴動の映像が少し流れる。道路を蛇行運転していた黒人を、白人警官が逮捕したのがきっかけで発生した暴動だ。

アメリカの黒人差別の歴史はこのような暴動が幾度と起きていたのだった。

1991年3月、黒人男性のロドニー・キングはスピード違反の容疑で止められ、警官4人から暴行を受けた。この一部始終は市民がビデオ録画されており、コレが十分な証拠となって警官が罰せられると見られていた。

一方、ロドニー・キングが暴行された事件の13日後。黒人少女のラターシャ・ハーリンズは、韓国人が経営する商店で万引きを疑われ、韓国人の店主によって射殺された。この一部始終は監視カメラが捉えており、ラターシャ・ハーリンズは万引きしておらず、韓国人店主は彼女の背後から発砲している様子が記録されていた。

同年1991年11月、裁判で韓国人店主の行為は故意の殺人として認定されたが、判決は5年の保護観察とかなり減刑されたのだった。

このような黒人差別に基づく事件はごく一部で、90年代に入って映像による記録が残るようになってきてから、声が挙げやすくなったというだけだったようだ。「俺達はずっと我慢してきたんだ」と訴える黒人市民たち。各地で黒人コミュニティによる集会が開催され、彼らの怒りはピークに達していた。

そして翌年1992年4月。ロドニー・キング暴行事件の裁判の判決が言い渡された。この裁判は様々な理由を付けて白人住民が多い地域で行われ、警官たちはなんと無罪となった。

コレに怒った黒人市民たちは暴徒化し、1992年4月29日の判決から約1週間近く、ロサンゼルス市街で暴動を起こした。黒人以外が経営する商店を襲い、放火や略奪が繰り返された。道行くクルマには石が投げつけられ、引きずり出された運転手はボコボコにされてしまった。ラターシャ・ハーリンズ射殺事件の影響もあり、韓国人が経営する商店への襲撃も激化した。

警察は当初、全く暴動を鎮圧できず、陸軍や海兵隊を導入したり、司法省がロドニー・キング事件の判決に対して再捜査を行うという異例の声明を発表するなどして、なんとか暴動は収束した。

…このような事件の発端から収束までが、全て記録映像 (当時のニュース映像など) で構成されており、一切の偏向がないように編集されている。再現ビデオだったり、多くのナレーションがあったりすると、どうしても製作者の意思に偏りそうだが、このドキュメンタリーはそうした要素を限りなく排除してあり、記録映像の臨場感がダイレクトに伝わってくる。

ロス暴動の映像や簡単な経緯は、「世界まるみえ」などで何度も放送されていて知ってはいたが、1960年代のワッツ暴動から豊富な資料映像で振り返ることで、黒人差別問題に関してより深く理解できたと思う。