映画「Usual Suspects ユージュアル・サスペクツ」を観た
1995年の映画。面通しのパッケージ写真が有名な傑作だが、…すんませんこれまで観たことなかったです。初めて観てみた。
冒頭。左手にピストルを持つ何者かが、船上でディーン・キートンを射殺。船は爆発した。
この船は麻薬を密輸していた船で、船からは多数の遺体が見つかるが、これらはマフィアの抗争によるものと捜査が進んでいた。関税局のクイヤン捜査官は、この事件の中で一人だけ生き残ったヴァーヴァル・キント (ケヴィン・スペイシー) から個人的に尋問を試みた。既にキントは保釈が決まっており、関税局には逮捕権がなかったのだが、クイヤンはこの事件にかつての同僚、ディーン・キートンが関わっていたために、どうしても真相を知りたく「権限のない尋問」を始めたのだった。
詐欺師であり、左手足が不自由なヴァーヴァル・キントは、事の発端を語り始める。
事の発端は6週間前。銃器強奪事件の「面通し」のため、次の5人が集められた。
- トッド・ホックニー : 爆弾の製造が得意な男
- マイケル・マクマナス : 切れると危ない男
- フレッド・フェンスター : マクマナスとともに強盗を行う男 (ベニチオ・デル・トロ)
- ディーン・キートン : 元汚職刑事で、現在は堅気になろうとしている
- ヴァーバル・キント
この5人は、何か事件が起こるといつも容疑者として名前が挙がる、「ユージュアル・サスペクツ」な5人だった。結局銃器強奪事件の犯人としては立件されず保釈されたが、5人で宝石強盗をやろう、という計画が持ち上がった。
堅気に戻ろうとしていたディーン・キートンは当初計画に乗り気ではなかったが、結局作戦に参加することになる。そして見事宝石強奪を成功させる。5人は身を潜めるためカリフォルニアに移動すると、そこで「レッドフット」という男から新たな宝石強奪計画を持ちかけられる。再び実行した5人だったが、強奪したケースには宝石ではなく麻薬が入っていた。
このことについてレッドフットに詰め寄ると、彼はある弁護士に会うよう指示する。その弁護士はコバヤシという名で、大元の依頼主「カイザー・ソゼ」がこの5人を集めるために仕組まれた強盗計画だったという。5人にはそれぞれ、カイザー・ソゼの取引を邪魔したり強奪したりした過去があり、カイザー・ソゼはその埋め合わせをさせるために、5人に麻薬密輸船を襲撃するよう命じた。
カイザー・ソゼの名を聞いたフェンスター (ベニチオ・デル・トロ) は逃亡するが、翌日遺体となって発見される。残る4人も恋人や身内を盾に脅されてしまい、結局命令どおりに船を襲撃することになる。
船に乗り込む直前、キートンはヴァーヴァル・キントに対し、「お前はここに留まれ、何かあったらお前だけで逃げろ」と言い残す。チームワークで船を襲撃し、キートンとマクマナスとで船内を捜索するが、船内に麻薬はなかった。その間、ホックニーは何者かに殺され、マクマナスも刺殺される。
一部始終を岸壁で目撃していたヴァーヴァル・キントは物陰に隠れる。するとそこに、「カイザー・ソゼ」と思われる男が現れ、ディーン・キートンを射殺し、船を爆破した。コレが冒頭に流れたシーンだったワケである。
…ヴァーヴァル・キントの独白が終わる。
一部始終を聞きながら、捜査中の情報を仕入れていたクイヤン捜査官は、「お前はキートンが射殺されるところをハッキリ見たのか?」と問う。キントの話では、物陰から見ていたため、キートンの姿はハッキリ見えなかったという。そこでクイヤンは、「キートンこそがカイザー・ソゼで、キートン自身を死んだように見せかけたのだ」と推理する。
船に乗っていたのは「カイザー・ソゼの正体 (キートンであること) を知っている人たち」であり、彼らを殺させることが、船の襲撃計画だったのだ、と推理するクイヤン。その話を聞き、友だと思っていたキートンに裏切られたのか?と疑心暗鬼になるキント。
クイヤンは「このまま釈放されたら、カイザー・ソゼ = キートンがお前を殺しにくるかもしれないぞ」と忠告するが、キントは「だからといって友を裏切るようなことはできない」として警察署を立ち去る。
左足を引きずりながら警察署を出たキントだったが、みるみるうちに麻痺がなくなっていき、スタスタと歩き出す。そしてコバヤシ弁護士が運転するクルマにさっそうと乗り込んだ。
一方キントを送り出したクイヤンが、何気なく部屋を見ると、そこにはキントの告白の中で登場した固有名詞などが書かれていることに気付く。マグカップの裏底には「コバヤシ陶器」と記載があり、壁に張られた書類には「レッドフット」、話の途中の雑談で出てきた「グァテマラ」や「イリノイ」といった単語も、全て部屋の中にある資料から引用されていたのだ。
キントの話は作り話か!?と気付き警察署を飛び出したクイヤンだったが、既にキントの姿はなかった…。
…ということで、信頼できない語り手作品としてまさに傑作といえる、二転三転する結末だった。
キントが部屋中をキョロキョロ見渡していたり、ある拍子に麻痺しているはずの左手でクイヤンを振り払おうとしていたり、あちこちに伏線があるので、もう一度見て確かめたくなる。
キントが語った内容はどこまで事実だったのだろうか。一見、「キントがカイザー・ソゼだったのか!」と思わなくもないが、別にその部分だってデマカセでも良いのだ。警察が掴んでいる客観的事実からすれば、フェンスター (ベニチオ・デル・トロ) が死んだタイミングは分からないし、「レッドフット」なる人物がいたのかどうかも怪しい。これらがどのようにも解釈できる作りになっているのが素晴らしい。
もうあちこちのサイトで十分に考察されているので、今更何も書かないが、まだこの名作を見たことがない人はぜひ見てみてほしい。