映画「Stasis ジャンプ」を観た

2017年。Netflix で見かけて、タイムトラベルモノだ〜と思って観てみたらかなりのガッカリ映画だった…

映画の最初のカット。ビルの電気が煌々と輝く夜の都市に、突如核爆弾が投下されるカットから始まる。どうやら核戦争らしいけど、そんな戦争やってるんだとしたら、こんなにビルでガッツリ働いてる人達なんかいないのでは…。

とりあえずそういうワケで舞台は2067年。マッドマックス的な荒野を歩く男女は、何やらシェルターに辿り着く。入口でダサい合言葉を言い合う「反乱軍」の方たち。彼らはタイムマシンで過去に戻り、核戦争を未然に食い止めようとする派閥のようだ。

二人にタイムマシンの装置が取り付けられていく。この男女は恋仲みたいで、お互いの身を案じながら、過去にタイムスリップしていった。


一方、戦争が起こる前の2017年。なんだか魚みたいな顔をしたキンパツ少女が、友達にもらったドラッグを飲んで気を失ってしまう。後で分かるが、どうやらこれは「死んだ」描写らしいのだが、気絶したのと区別がイマイチつかない。

一度倒れた金髪は再び目を覚ますが、周囲にいた友達たちの姿がない。そして自宅に変えると、自分にそっくりな少女がベッドに寝ていた。あわててインターホンを鳴らし、母に助けを求めるが、母は自分の姿が見えていないらしい。この金髪はどうやら霊体になってしまったようだ。

翌朝、自分にそっくりな金髪少女は、家の食料をあさりまくる。そしてノートパソコンを開いて、「反乱軍」たちに「潜入成功」とチャットを送る。さらに、外出先の公園で見知らぬ男子大学生とハグをする。その男子大学生は「僕の体は新入生歓迎会でハメを外して急性アル中で死んだらしい」と語る。

どうも、金髪少女がドラッグで命を落とした瞬間、2067年からやってきた女がその少女の体に乗り移り、「金髪は死ななかった」という世界軸を作り出したようだ。同様に男の方も、どこぞの大学生が急性アル中で死んだところに乗り移ったようである。なんだか「マトリックス」みたいな設定である。

自分が死んでしまったことに気付いた霊体少女は、急に「千の風になって」の詩を読む。

若くして亡くなった2017年の男女に乗り移った、2067年から来た未来人の男女。二人は同じく過去にタイムスリップして活動している、他の「反乱軍」たちが集まるアジトに向かった。彼らが何の活動をして戦争を食い止めようとしているのかはよく分からないが、とりあえず反乱軍たちが集まっているのである。


一方2067年。「反乱軍」ときたら「帝国軍」がいるワケだが (違)、戦争で勝利を収めた派閥の連中は、反乱軍が過去にタイムトラベルして歴史を改変しようとしているのを快く思っていない。そこで「ハンター」と呼ばれる女を同じく過去に送り込み、反乱軍の活動を阻止することにした。

2017年に送り込まれたハンターはハル・ベリーもどきみたいな女で、ラジカセなどのパーツを組み合わせた自作のエフェクターみたいなモノを作る。そして帰宅途中の反乱軍のババアに近付くと、そのエフェクターみたいなヤツを投げつける。すると反乱軍のババアの魂がそのエフェクターに吸い込まれてしまった。ポケモンかな?

そしてそのエフェクターを道端に放置すると、帝国軍に電話をかけ、「2067年でこの装置を調べてちょうだい」と連絡する。2067年の帝国軍が、その道端に放置されていた装置を回収(50年もそのまま残ってたの?!)、中身を調べる。すると魂を吸い取られた反乱軍のババアの記憶が再生でき、2067年のアジトの所在がバレてしまった。

送り込まれた帝国軍によって、たちまち破壊される2067年のアジト。これにより、2017年に派遣されている反乱軍のエージェントたちは、帰る術を失ってしまった。


一方、霊体となった金髪少女は、なんとかして自分の体に戻りたいので、ハル・ベリーもどきのハンターとコンタクトを取る。ハンターがかけるサングラスは「ターミネーター2」みたいな感じで色んなセンサーが付いていて、霊体が見えるようになっていた。そして霊体少女は念力でスマホを操作し、「ココに自分の身体が居る」と、2017年のアジトの場所をチクる。

ハンターはアジトに潜入し、男女二人以外を皆殺しにする。男の方も銃で肩を撃たれてしまい、急いで金髪少女の自宅に避難する。未来人が2017年の人々と接触すると余計な歴史改変が起きるとも限らないから、彼らは怪我をしていても病院には行かないのだ (行けば?)

少女の自宅で止血しようとしていると、少女の母親が登場。まずいところを見られた二人は、仕方なく母親を縛り上げる。そこに金髪の霊体が戻ると、気配を察知した女は、「あなた、霊体として生きてるのね?!あなたがハンターを送り込んだせいで核戦争が起きたのよ!!」と、核戦争の原因を霊体少女になすりつける。平謝りする霊体少女。

そこにハンターが現れた。劣化版「パージ」とでもいおうか、ショボい戦いが家の中で繰り広げられる。なかなか止血をしてもらえず瀕死の男は、女に「君一人で、他の街にある、反乱軍の別のアジトに行くんだ」と言い残して倒れる。

金髪少女とハンターが一騎打ちで戦っていると、霊体少女が横から現れ、「ハンターさん、あんた悪いヤツなのね!」と言う。そしてハンターが持っていた、魂を吸い取るエフェクターを作動させ、ハンター自身を吸い取らせる。しかし近くにいた霊体少女と、金髪少女 (女エージェント) も巻き込まれてしまう。

さっきまで顔色が真っ青だったはずの男が起き上がり、エフェクターに駆け寄る。目を覚ました霊体少女は、元の身体に戻れていることに気付いた。ということは、女エージェントの魂はエフェクターに吸い取られてしまったのか…。落胆する男。その横で目を覚ましかけたハンター。慌ててハンターを締め上げようとするも、冒頭のダサい合言葉を口にするハル・ベリーもどき。そう、エフェクターに吸い取られたのはハンターで、ハル・ベリーもどきの身体には女エージェントが乗り移っていた。ご都合主義!

翌朝、男子大学生とハル・ベリーもどきのエージェント二人は、反乱軍の別のアジトへと旅を始める。よく分からないことだらけだったが、これまでの行いを反省した金髪少女は、二人に感謝し、別れを告げる。そして家の中に戻った少女が言う。「お母さーん、今日の朝ごはんは何ー?」

おしまい。


…何ですかコレ?\(^o^)/

という設定は面白かったのだが、タイムトラベルや核戦争にまつわる戦いにはフォーカスしておらず、2017年の世界で霊体となった金髪少女の更生の物語であった。

そのどちらもが中途半端に描かれ、登場人物たちの動機や行動理由がちっともハッキリしないまま終わる。話の意味は分かるが、映画として表現・映像化しきれていないのだ。

パソコンや監視カメラの画面のハメ込み合成感がスゴイし、「エージェントが見ていた記憶」を再生して見ているはずなのに、「さっきのカット」をそのまま利用してるから、記憶の中の映像なのに「自分自身の姿が第三者目線で映る」というお粗末っぷり。やはり、意味は分かるが表現が下手である。

劇中、唐突に「千の風になって」を英詩で歌うシーンがあって、「『千の風になって』って秋川雅史原曲じゃなくて海外の曲なの?」と思ったら、どうも海外の古い詩だったらしい。アレが原曲じゃない、というトリビアを覚えられたので、この映画の価値は多少ありそうか。

というワケで、全てが中途半端な、バカなティーン向けの映画でした。