映画「American Beauty アメリカン・ビューティ」を観た
1999年。
保険のセールスマンとして働くケヴィン・スペイシー。妻のアネット・ベニングは完璧主義な不動産の営業。娘のソーラ・バーチは反抗期。そんな冷え切ったアメリカの家庭を描いた作品。
ケヴィン・スペイシーはある日、娘の友達のミーナ・スヴァーリに恋をしてしまい、枯れていた心が潤い出す。会社を辞め、小言を言ってくる妻にはビシッと一喝。ミーナが「鍛えている男性が好き」と言っていたのを聞くと筋トレを始め、隣の家の青年ウェス・ベントリーからマリファナを買うようになる。
このウェス・ベントリーは、やたらとビデオカメラを回す変な男。娘ソーラと同じ学校に通っていることが分かり、最初は嫌っていたソーラだったが、彼の話を聞く内に彼に惹かれていく。
妻アネットは、豹変したケヴィン・スペイシーと、反抗期の娘にうんざりし、同じ業界で売れている営業の男と不倫を始めてしまう。その様子をケヴィン・スペイシーに見つかるが、ケヴィンは意に介さない。アネットはメチャクチャになった人生を嘆くも、「自らの手で人生を切り開くのだ」と自分を鼓舞し、拳銃を手に取る。
ケヴィンはいつものように、ウェスからマリファナを買う。しかしその一部始終を遠巻きに見ていたウェスの父親は、ウェスがケヴィンに「ご奉仕」していると勘違い。父親がウェスに問い詰めると、ウェスはマリファナを没収されるよりゲイ扱いされた方がマシと判断し、「そうだよカマを掘らせてるのさ」と答え、勘当を言い渡される。
そこに、娘が久々にミーナを連れて帰宅。ミーナは筋トレで鍛えられたケヴィン・スペイシーにうっとり。そのままベッドインしかけるが、そこでミーナは「初めて」であることを告白する。コレを聞いて「娘ほどの子供に手を出して何をやっているんだ」と目が覚めたケヴィン。そして娘が恋愛をしていることをミーナから知らされたケヴィンは、幸せだった頃の家族写真を眺め、人生をやり直そうと誓った。
そこに、ウェスの父親が拳銃を手にして現れる。ゲイを何よりも嫌っていたウェスの父親は、ケヴィン・スペイシーを背後から射殺する。世界は美しいものに満ち溢れている。「美にあふれる世界で怒りは長続きしない」、そう悟りを開いた時には、ケヴィンは死んでいたのだった。
なんとも一言では言い表せない映画だ。アメリカの様々な事情が、一家とその周囲の人々に凝縮されていた。自己実現という強迫観念に近い理想論だったり、麻薬や同性愛といった諸問題だったり。それがどことなく面白おかしく描かれていて、奇妙な映画だった。