映画「Born on the Fourth of July 7月4日に生まれて」を観た

1989年。ベトナム戦争を経験した海兵隊を描いた作品。トム・クルーズ主演。

敬虔なキリスト教徒の家庭で、7月4日 (独立記念日) に生まれたトム・クルーズは、アメリカに強い愛国心を抱いて育つ。高校で海兵隊のリクルートを聞き、入隊を決心する。そして1967年、ベトナム戦争に従軍するが、そこで誤って民間市民を攻撃してしまう。誤ちに気付いたのも束の間、ベトコンから奇襲を食らい、パニックになったトムは仲間に誤射して死なせてしまう。

罪悪感が拭えぬ中、続く翌年の戦闘でトム自身も撃たれてしまい、瀕死の状態でアメリカに帰国、病院に担ぎ込まれる。病院はベトナム戦争の影響で予算が割かれておらず、不衛生極まりないものだった。トムは下半身不随になり、1年間の療養を余儀なくされる。

1969年、ようやく実家に帰宅できたものの、世間はベトナム帰還兵に冷ややかな目を向ける。PTSD にも苛まれ、酒浸りの生活が続く。母親にも不満をぶつけ、家庭は崩壊、父親の奨めでメキシコ旅行に向かった。

メキシコでも自堕落な暮らしを送っていたが、やがて誤射してしまった仲間の遺族に謝罪したいと思うようになる。意を決して遺族の元を訪れ謝罪すると、遺族は「私はあなたを許せないが、神は赦すだろう」と理解を示される。

そしてトムは反戦デモに参加するようになるが、「愛国心がゆえの戦争反対」という思いは世間に届かず、弾圧を受けてしまった。

それから4年後の1976年。自伝「7月4日に生まれて」を出版し、民主党大会の演説に臨むトムの周りには大勢の支援者がおり、彼を舞台へと見送ってくれるのだった。


ロン・コーヴィックという実在の人物による自伝がベースで、かなり重たい映画だった。戦闘による負傷シーンや、劣悪な衛生環境の病院もリアルで、その後の堕落してしまった生活も生々しかった。

2020年時点で、日本の原爆投下 (1945年) も75年前の話だが、ベトナム戦争も終戦 (1975年) から45年経とうとしている。映画が公開された1989年 (終戦から14年後) 当時と現在とで比べると、この映画の見方もまた少し変わってくると思うが、国を愛しているからこそ戦争を望まない、という思いは強く感じた。