Netflix ドキュメンタリー「Darren Brown The Push」を観た

2018年。メンタリストのダレン・ブラウンが仕掛ける大掛かりなドッキリ。

人は「服従心」を心理的に突いていったら、最終的に「人を殺せ」という指示に従うのか?という実験。ターゲットは架空のパーティ会場で、支配人から徐々に服従させられていく。

最初は「ベジタリアン向けの食材ではない料理に『ベジタリアン用』の印を付ける」ぐらいの軽い嘘から始まるが、徐々に「他人の大物のフリをさせられる」「心臓発作で亡くなった人の遺体を隠す」「アリバイ工作のため遺体を蹴って傷をつける」などとエスカレートしていき、最終的に「全てを白状してお前が逮捕されるか、ヤツを殺して証拠隠滅するか選べ!」と迫られる。

精巧な「遺体」を作るために特殊メイクのチームに協力を要請したり、建物をまるごと借り切って架空のパーティ会場を作ってみせたり、とにかく金のかかった大規模なドッキリを仕掛けていて、傍目には疑う余地もないほどのクオリティになっている。

4名に同様の実験を行った結果、3名は指示に従い、男性をビルの屋上から突き落としてしまった。この決心をする直前の、混乱と葛藤の中で男性を突き落とすことにした被験者たちの様子がとても生々しい。

突き落とされた男性にはキチンとハーネスが付いていて、もちろん無事。最後はダレン・ブラウンが登場してネタバラシするが、なかなか生きた心地のしないドッキリであろう。さすがに被験者が可哀想すぎて、ドキュメンタリー全体がヤラセであってほしいと思うくらいだ。

さすがに人を殺すような指示に従うなんてありえないだろ、とも言いたくなるが、人間にはどんな心理的な弱点があるのか、どういうことが発生すると人は騙され、思ってもいない思想に服従してしまうのか、そういったものの一端が垣間見えるドキュメンタリーだった。