バックグラウンドクエスチョンとフォアグラウンドクエスチョン:疑問の種類を分類して対処する

理学療法、EBM (根拠に基づく医療・Evidence Based Medicine) の文脈で使われる用語らしいのだが、

という言葉を知った。

エンジニア業や、その他の専門職でも応用が利きそうな言葉だったので紹介する。

目次

バックグラウンドクエスチョンとは

バックグラウンドクエスチョンとは、簡単にいうと「調べればすぐに分かる疑問」のことを指す。学術的な疑問や、教科書的な問題のことだ。

医学の領域以外でも、

といった疑問は、調べたらすぐに分かるし、人によってそう答えが変わるモノでもないから、バックグラウンドクエスチョンに分類される。

フォアグラウンドクエスチョンとは

フォアグラウンドクエスチョンとは、逆に「調べても解決しない、その場その場の固有の問題」を指す。目の前の患者さんに固有の問題をいかに解決するか、という疑問が当てはまる。

身近な例だと、

こうした疑問は、ググっても「コレこそが答えです」というモノが出てこない。大抵は「こういう視点で見れば A が良いが、A のデメリットはこういうところで、別の視点からみると B にも優位性がある」というように、答えを一つに決めきれず、その場その場でより適切だと思う方を選ぶしかない、といった疑問だ。

既存のモノに対する 5W1H の疑問はバックグラウンドクエスチョンに近い

既存システムに対する、5W1H に分類される疑問は、バックグラウンドクエスチョンであることがほとんど。

それは何をするシステムなのか、誰が使うシステムなのか、どこのサーバで動作しているのか…。これらはほぼ一つの答えがあり、調べれば確実な答えが得られる。

新たに考慮・設計する事柄は、フォアグラウンドクエスチョンで悩む時間が多くなるようにしよう

バックグラウンドクエスチョンとは、調べれば答えが分かること。教科書を開いて、ググったら解決する。

こうした問題を解決するのに、やたらと時間を使うのはあまり効率的とはいえない。

新たなシステムを設計することになった時、前提となる知識が少なく、専門知識も有していないために判断がつかない、というのであれば、それはフォアグラウンドクエスチョンを考える土台となるバックグラウンドクエスチョンの知識が足りないということになる。

調べれば分かることなのに、調べずに自分の頭で考えてひねり出すと、大抵は車輪の再発明、既存のアイデアより劣ったモノが出来上がる。「バカの考え、休むに似たり」ということだ。

新人に「分からないことがあったらすぐに聞いて」と声をかける上司は、「バックグラウンドクエスチョンならすぐに答えや調べ方を教えてやるし、フォアグラウンドクエスチョンならこの現場固有の知識がないと分からないから、そこに時間をかけて教えてやるぞ」という意味なのである。どちらにしても、新人が時間を使って考えたり調べたりしたところで、あまり効率的ではないということだ。

あまりにも初歩的なバックグラウンドクエスチョンばかり質問されても鬱陶しいが、代わりに検索の仕方を教えたり、参考文献を教えたりすればよかろう。既に答えがあることで余計に時間を使わない。せっかく独創的なことができる人間の脳を持っているのだから、フォアグラウンドクエスチョンを解決するために使いたいところだ。

フォアグラウンドクエスチョンを適切に解決するには、多くのバックグラウンドクエスチョンに対する答えを「知識」として持っておかないといけない。この関係性が分かれば、どの疑問から対処するか、どの疑問に時間を割くか、という行動計画を立てやすくなる。