Google フォト、2021年6月から容量無制限撤廃。テラバイト級のバックアップがしたいので代替手段を考えてみた
Google フォトは、コレまで「高画質」設定だと写真や動画が容量無制限でアップロードできたが、このサービスが2021年5月末に終了するそうだ。以降は Google ドライブ同様、無料で置けるのは 15GB までとなる。
- 参考 : Google ストレージの仕組みに関する今後の変更 - Google フォト ヘルプ
- 参考 : Googleフォトの容量無制限無料バックアップ、2021年5月末で終了 - ITmedia NEWS
コレまで「高画質」設定で保存していたファイルたちは期限後もそのまま無料で置き続けられるようだが、15GB なんてすぐ使い果たしてしまう。それに、「該当サービスを2年間利用しないとデータが削除される」というポリシー変更も入っているので、なんだか全体的に無料で使いづらくなった感じ。
自分は写真や動画 (特に動画が多い) ファイルを 4TB 近く保有していて、それをバックアップするために Google フォトを使っていたのだが、こうなってしまうともはや有料でもなんでも、代替手段を探さないといけなくなった。
というワケで、今回はテラバイト級 (2TB 超え) のデータがバックアップできるサービスと料金を調べてみた。
目次
- Google One
- Google Workspace
- Microsoft OneDive
- Box
- Dropbox
- AWS Glacier・Glacier Deep Archive
- OCI : Archive Storage
- その他
- まとめ
Google One
Google の有料プラン。
- 2TB : 月額1,300円・年額13,000円
- 参考 : ログイン - Google アカウント
2TB ぐらいまでのプランは、色んなサービスで見かけるんだけど、自分はとっくに 2TB なんて足りなくなってるから、もっと欲しいのよね。
調べてみると、2TB 以上のプランは画面に表示されないが、一度 Google One を契約すると、さらにアップグレードという形で、10TB 〜 30TB まで増やせるらしい。
- 10TB : 月額13,000円
- 20TB : 月額26,000円
- 30TB : 月額39,000円
2TB プランの年額相当の月額になる。年間15万6,000円とかやってられんわ。
Google Workspace
旧 G Suite。旧 G Suite には容量無制限のプランがあったが、現 Workspace には存在しない。
- Business Plus プラン
- 5TB : 月額2,040円
金額が載っているのはこのプランが最上位。以降は「必要に応じて増やせる保存容量」ということで Enterprise プランが存在する。ビジネスプランでも1人から使えるのが珍しいところ。
5TB ってもう少ししたら到達しちゃうし、そしたらアカウントを分割して運用するにしても、10TB 月額4,080円ってことかな。
Microsoft OneDive
Google 課金を止めてみる。MS を見てみよう。
家庭向けプランだと Microsoft 365 Personal (年額12,984円) というプランで 1TB まで。それ以上の容量が取得できるのは、一般法人向けの以下のプランのみだった。
- OneDrive for Business (Plan 2) プラン
- 容量無制限 : 月額1,090円 (年間契約・年額13,080円)
- 最低5ユーザ必要
「容量無制限」は素晴らしいのだが、このプランで契約するユーザが最低5人いないといけない (5人未満で始めると一人あたり 1TB が上限になる)。
5人ということは、×5 で月額5,450円、年額65,400円。Google よりは良心的な金額だが、金を払ってでも 1TB 以上の容量を使いたい人が周りに5人もいないので、その点がちょっと無駄。あとこのプランは Office が付いていないので、マジでストレージのみ。
あと、Office 365 のプランで問い合わせると、25TB まで増やしたりする方法もあるみたい。面倒ではあるがコレも候補かな。
- 参考 : OneDrive for Business の個人用オンライン ストレージ上限を 25TB に拡張してみた① まずは5TBに拡張してみよう | 東京とフィリピンを行ったり来たり生活の技術メモ
Box
- Business プラン
- 容量無制限 : 月額1,800円 (年払い)
- 最低3ユーザ必要
MS OneDrive より少し高いが、3人で始められる。3人分の月額は5,400円なので、OneDrive の5人プランと比べて50円安い。…最安ではあるが、金額はあまり変わらんな。自分以外に2人、テラバイト級のデータを扱いたい友達がいればアリかも。
Dropbox
- 個人 Plus : 2TB : 月額1,200円
- 個人 Professional : 3TB : 月額2,000円
個人だと 3TB 上限。
- Business Standard : 5TB : 月額1,250円
- Business Advanced : 容量無制限 : 月額2,000円
- 最低5ユーザ必要
AWS Glacier・Glacier Deep Archive
テラバイト級のデータを置きたいとなった時に、仕組み上は、S3 でも、EC2 にアタッチするボリュームでも、借りたいだけ借りれば数テラぐらい扱うことはできる。問題は料金だ。
今回は、写真・動画のバックアップが目的なので、頻繁に取得する必要はないと考えた。そうすると選択肢に上がるのはコールドストレージだ。
AWS S3 の場合、Glacier というモノと、Glacier Deep Archive というモノの、2種類のコールドストレージがある。取り出しの速度・頻度によって使い分ければ良さそうだが、とりあえず両方の金額を見てみる。
- 参考 : 料金 - Amazon S3 |AWS
- 参考 : Amazon Web Services Simple Monthly Calculator
- 「米国東部 (オハイオ)」リージョンの USD で確認
S3 Glacier
- 1 分から 12 時間の取り出しオプションを使用した長期バックアップとアーカイブの場合
- すべてのストレージ/月 : 0.004USD/GB
- PUT、COPY、POST、LIST リクエスト (1,000 リクエストあたり) : 0.05USD
- GET、SELECT、他のすべてのリクエスト (1,000 リクエストあたり) : 0.0004USD
- ライフサイクル移行リクエスト (1,000 リクエストあたり) : 0.05USD
- データ取り出しリクエスト (1,000 リクエストあたり)
- 迅速 : 10.00USD
- 標準 : 0.05USD
- 大容量 : 0.025USD
- データ取り出し (GB あたり)
- 迅速 : 0.03USD
- 標準 : 0.01USD
- 大容量 : 0.0025USD
- プロビジョニングされた容量単位 : ユニットあたり 100.00USD
- プロビジョニングされたキャパシティーユニットを使用すると、指定された月に S3 Glacier からの迅速取り出し用にキャパシティーをプロビジョニングできます。プロビジョニングされたキャパシティーユニットはそれぞれ、5 分ごとに 3 回以上の迅速取り出しを提供し、最大 150 MB/秒の取り出しスループットを提供します。
- インターネットから Amazon S3 へのデータ転送受信 (イン) : 無料
- Amazon S3 からインターネットへのデータ転送(アウト)
- 1 GB/月まで : 0.00USD/GB
- 次の 9.999 TB/月 : 0.09USD/GB (コレがけっこうかかる…)
- 次の 40 TB/月 : 0.085USD/GB
- 次の 100 TB/月 : 0.07USD/GB
- 150 TB/月以上 : 0.05USD/GB
…とりあえず料金体系がメチャクチャ分かりづらいことだけ分かった。データを置く代金の他に、「置かせてくださいリクエスト」「取り出させてくださいリクエスト」「取り出す際のネットワーク通信料」が掛かるイメージだ。
試しにコスト計算ツールで、4TB のデータを置いて、それを1ヶ月で全部取り出したとして、月額がどのくらいになるか見てみた。
- ストレージ 4TB : $16.39
- データ取得 4TB Bulk : $10.24
- アウトバウンド通信 4TB : $368.55
ファイル数とかによると思うので、リクエスト料金を含んでいないが、まぁ数ドル以内だろう。
データを 4TB 分置くだけなら、毎月16ドル・年額192ドル (今のレートだと年額20,000円程度)。もし取り出したくなったら、リクエストと通信料で380ドル近くかかるが、ココはしゃーなしと割り切っても良さそう。
S3 Glacier Deep Archive
- 1 年に 1〜2 回アクセスされ、12 時間以内に復元できる長期のデータアーカイブの場合
- すべてのストレージ/月 : 0.00099USD/GB
- PUT、COPY、POST、LIST リクエスト (1,000 リクエストあたり) : 0.05USD
- GET、SELECT、他のすべてのリクエスト (1,000 リクエストあたり) : 0.0004USD
- ライフサイクル移行リクエスト (1,000 リクエストあたり) : 0.05USD
- 3つのリクエストは Glacier と同じ
- データ取り出しリクエスト (1,000 リクエストあたり)
- 標準 : 0.10USD (Glacier より高い)
- 大容量 : 0.025USD (Glacier と同じ)
- データ取り出し (GB あたり)
- 標準 : 0.02USD (Glacier より高い)
- 大容量 : 0.0025USD (Glacier と同じ)
コチラも 4TB のデータを扱うテイで見積もってみた。
- ストレージ 4TB : $4.06
- データ取得 4TB Bulk : $10.24
- アウトバウンド通信 4TB : $368.55
ストレージ料金が月額4ドルと、Glacier の4分の1。年額48ドル (5,000円程度)。データ取得リクエストとアウトバウンド通信は Glacier と同額だ。
- 参考 : AWS S3 Glacier Deep Archive - AWSで一番安いストレージの試し方 - Qiita
- 1TB 1年間 $11.88
- 参考 : AWS初心者がAmazon S3 Glacier Deep Archiveで格安でバックアップしてみた(2020年版)|小村大樹|note
- データを取り出す際 : 1TB $20
- 取り出したデータをダウンロード : 1TB $90
金額感は合ってるっぽい。
取り出しに Glacier よりも時間がかかるが、普段は触らない完全なバックアップとみなし、取り出し時はイコール非常事態のリストアと思えば、コレでもいいかもしれない。
ただ、Glacier も Deep Archive も、アップロードやリストア時の面倒なアレコレを全く考慮していないので、「運用コスト」が高く付きそうではある。
OCI : Archive Storage
Oracle Cloud がやっているコールド・ストレージも見てみる。
- 参考 : Storage Pricing | Oracle 日本
- 1GB/月 USD $0.0026
- データ転送無料
- 参考 : Cloud Cost Estimator
- 4TB で月額10ドル
年額で120ドル、12,600円程度か。
ストレージ自体の金額感は、Deep Archive 以上・Glacier 未満だ。しかし、データ転送料金が一切かからないので、取り出しの際はリクエストして待つだけで、380ドルもかかったりしないのが良いところ。
単純に置いている容量分だけ課金することになるので、料金体系は分かりやすい。API は AWS S3 と互換性があったと思うので、扱いもまぁまぁしやすい方かと思う。
その他
- Amazon Photos・Amazon Drive
- Prime 会員になると写真は容量無制限だが、動画は 5GB まで
- Yahoo! かんたんバックアップ
- Yahoo! プライム会員になると、スマホからバックアップした写真・動画は容量無制限
- ソフトバンクユーザは Yahoo! プライムの料金がかからない様子
- GoPro とか一眼カメラとかで撮ったデータも大量にあるので、今回の用途には合わず
- その他のコールドストレージサービス
- あまり調べてないけど、「AWS や他所よりも安い」と謳っているサービスはそんなになさそうだった
まとめ
調べきれていないところもあるだろうが、今回調べた中でまとめてみる。
- 容量無制限のクラウドストレージを借りられるサービスは Microsoft OneDrive・Box・Dropbox のビジネスプランだった
- 最低ユーザ数での月額が最安なのは Box
- OneDrive は1ユーザあたりの月額が最安。OneDrive アプリで同期もしやすそう
- Dropbox は 2・3・5TB プランもあるので、容量に合わせて柔軟にプランが選べる
- (Google 容量無制限プランなし。30TB まで借りられるプランはあるがべらぼうに高い)
- コールドストレージの最安値は AWS S3 Glacier Deep Archive。4TB の保存に月額4ドル
- ただし取り出し時の料金が4万円近くかかる。アップロードも大変そうで、つまづきポイントが多そうだ
- コールドストレージで課金体系が分かりやすいのは Oracle Cloud の Archive Storage
- 通常の Glacier よりも安く、通信料がかからない。4TB 使ったとしたら月額10ドル
コールドストレージはスキルが要るが、滅多に取り出さないつもりなら格安で運用できる。特に Deep Archive は中でも格安。
ただし、ビジネスプランの最低ユーザ数の関門さえクリアできれば、OneDrive の容量無制限プランがかなりお安く、扱いやすいだろう。利用料は AWS S3 Glacier や OCI Archive Storage と同等だ。
Google は過去に G Suite から Google Workspace に移行する際にプランや料金が変更されているが、MS のプランならしばらくはそう変わらないプラン料金で使えるはずなので、Google フォトからの移行先に選んでも良いかも知れない。
…ふと思ったが、4TB の HDD って最近は8,000円もあれば買えてしまう。毎年 HDD を買って、コピーを増やしていけば激安なのでは…。
古くなった HDD も、いきなり捨てずに実家や親戚の家に置かせてもらえば、1世代前のデータを DR 対策でバックアップ、みたいなこともできちゃうし…。
クラウド止めたらいいんじゃね?w