映画「Gemini Man ジェミニマン」を観た
2019年。ウィル・スミス主演。アン・リー監督、ジェリー・ブラッカイマー製作。
あらすじ
DIA (アメリカ国防情報局) の凄腕スナイパーのウィル・スミスは、任務と自分との違和感を拭えず、50歳を超えて老いを感じ始めたこともあり、引退を決意する。
引退生活を始めたウィルは、レンタルボート屋の受付に入ったメアリー・エリザベス・ウィンステッドが自分を監視する DIA エージェントだと気付く。そして旧友と落ち合うと、ウィルが最後に始末したターゲットが、実はテロリストなどではなく生物学者だったと聞かされる。
その出来事の裏には、かつてウィルの上司であったクライヴ・オーウェンが関わっていた。彼は秘密組織「ジェミニ」の指揮官となっており、ウィルが計画に気付くことを懸念して暗殺部隊を送り込む。
ウィルは暗殺部隊をかわし、事情を知らぬまま巻き込まれたメアリーを助ける。そして旧友ベネディクト・ウォンの助けを借りてコロンビアに逃げる。
3人はコロンビアに潜伏したが、そこにも追手が現れた。その追手はウィルの若い頃と瓜二つの若者で、凄腕の殺し屋であった。
ウィルはなんとか逃げることができた。メアリーは追手が残した帽子とウィルの血液を DNA 鑑定し、両者が「同一人物」、つまり追手はウィルのクローンであることを突き止めた。
一行はハンガリーに飛び、生物学者だったターゲットがテロリストだと改変されていた件について事情を知る「ユーリ」という男に会う。そこでウィルは、クライヴ・オーウェンが秘密裏にクローン人間を生み出し傭兵部隊を組んでいると知る。クライヴはこの「ジェミニ計画」に賛同せず逃亡した生物学者を、ウィルに暗殺させるよう情報を操作していたのだった。
ウィルはハンガリーにまで追ってきた追手のクローンと対決し、彼がクローンであること、育ての親となっていたクライヴ・オーウェンがクローンを利用した計画を立てていることを明かし、説得を試みる。動揺したクローンはその場を去り、クライヴに真相を尋ねるが、クライヴは真相を明かすことはなかった。
クライヴに疑問を持ったクローンは再びウィルと接触し、彼らと手を組むことにした。クローンは自らの名を聞かれ、「ジュニア」としか呼ばれなかった、と語る。ウィルは彼を「ジュニア」と呼ぶことにした。そこに突如ジェミニの暗殺部隊が押し寄せ、戦闘が始まる。ウィルとメアリーはともに戦い、ジュニアはクライヴに立ち向かう。
暗殺部隊を一掃し、ジュニアがクライヴをぶん殴ったところに、圧倒的な強さを誇る1人の暗殺者が現れる。3人は協力してなんとか暗殺者を倒し、ヘルメットを剥ぎ取る。するとなんと、その暗殺者はジュニアよりもさらに若い、ウィルのクローンだった。
そこに現れたクライヴは「ジェミニ計画」の全貌を語る。戦争により軍人が負傷したり、帰還後も PTSD 等で苦しむような現状を危惧したクライヴは、人間の代わりにクローン兵士を作り、戦場に送り込もうと考えた。ウィルは優秀な兵士だったため、DNA を採取してジュニアを作ったという。また、最後に倒した暗殺者は、「ジュニア」からさらに DNA に改良を加え、人間らしい感情や痛みの感覚などを取り除いたクローン兵士だったというのだ。
怒ったジュニアはクライヴに銃を向けるが、ウィルは後悔するぞと諭す。そしてジュニアから銃を取り上げると、ウィルが代わりに引き金を引き、クライヴを倒したのだった。
…半年後。
ジェミニ計画は中止された。ジュニアは「ジャクソン」という新たな名前を得て大学に通い始めた。3人は今も交流を持ち続けているのだった。
感想
目を凝らしても CG と分からない、若いウィル・スミスが衝撃的な作品。
VFX メイキングを見てみると、ボディ・ダブルに若ウィルの顔の CG を乗せているだけではなく、全身 CG で処理している場面も多かった。さらには現在のウィル・スミスの顔すらも CG で作っている場面が多数あって驚いた。特に、バイクチェイスシーンの長回しシーンは、最後に老ウィルのバストアップになるのだが、それが全て CG だったとは気付かなかった。若干表情に違和感があったものの (ウィルの演技にしてはあまりしない表情だった)、顔から身体まで全て CG だとは見抜けないほどだった。
4K・120fps で 3D 撮影されており、映画館によっては 60fps や 120fps のヌルヌル画質で視聴できた。撮影は2018年1月から5月までだったそうだが、それをあれだけ CG 加工して2019年10月に公開できるんだから、凄い時代だなーと思った。
映画化の企画自体は1997年頃からあったようで、2001・2年には Human Face Project なる短編フィルムで技術検証が行われていたようだ。
2002年にしては頑張っていると思うが、まぁ見たら分かるレベルの CG である。ということで当時は技術が追いついていないとして計画が頓挫していたが、2016年頃になって映画化が決まったようだ。
メアリー・エリザベス・ウィンステッドは、デス・プルーフ (2007年) の印象がありますね。あれから12年ほど経って、若干印象が変わった希ガス。吹き替えが菅野美穂だったんだけど、棒読みちゃんでした。
そうそう、吹き替えでいうと、老ウィルを江原正士、若ウィルを山寺宏一がやっていて、それもなかなか面白かった。
正直、CG だけ目当てで見たのでストーリーは気にしていなかったが、「心や身体に傷を負う兵士が減らせるなら、クローン技術は良いじゃないか」というヴェリス (クライヴ・オーウェン演) の主張に、若干賛同しかかるというか。クローンといえども生まれたら人間でしょう、平等に人権があるでしょう、とも思うけど、戦闘用に調整されて生み出されたクローンなら…とか思っていてふと気付く。誰も戦わん方がいいべ。
エンディングは円満解決で、比較的ありきたりなストーリーではあったが、スッキリ見終われて良いと思う。