映画「Replicas レプリカズ」を観た

2018年。キアヌ・リーヴス主演。

キアヌはバイオ企業で働く科学者。亡くなった人間の脳の意識を人工脳に移植する研究を行っている。人間の意識などは全て科学的な物資の組合せで制御できることが分かっており、移植作業は成功するが、「ロボットの身体に移植された」という当人の自我が保てず、研究が失敗していた。研究所の上司のジョン・オーティスからは、早く成果を出せときつく言われていた。

家族は一男二女の子供に恵まれ、妻アリス・イヴとも円満だった。妻は医師であるため、人の死生を操作する夫キアヌの研究と倫理観を懸念していた。

家族は休暇で旅行に向かうが、道中で自動車事故により、キアヌ以外の家族全員が即死してしまう。家族の遺体を抱き寄せ、悲しみに打ちひしがれるキアヌは、ふと禁断の計画を思いついてしまう。

急遽、同僚のトーマス・ミドルディッチを事故現場に呼び出すと、キアヌは家族の意識や記憶を装置に保存し始めた。自分の研究を利用して、なんとか家族のクローンを作ろうと考えたわけだ。遺体は同僚のトーマスに廃棄を依頼した (鬼畜)。

キアヌは「意識の移植」を中心に研究をしていたが、トーマスは「クローン人間の身体の培養」が得意分野なようだ。そこでキアヌはトーマスに依頼し、クローン人間の身体を作るための装置を借りることにする。人の意識が神経物質から構成されているように、人体も結局は様々な物質によって作られているから、DNA があれば身体を再現可能だというわけだ。

しかし、研究所にあった培養装置は全部で3つ。家族は妻と子供3人なので、4つの装置が必要だ。というのも、4人が同時に複製できて、同時に目を覚ましてもらわないと、クローンであることがバレてしまうからだ。家族の誰を復元しないことにするのか選択を迫られたキアヌは、断腸の思いで、一番下の娘、ゾーイを複製しないことに決める。

そして、家族の記憶の辻褄を合わせるため、装置に記録されていた「家族の記憶」を改変し、ゾーイに関する記憶を全て抹消したのだった。あわせて家の中の「ゾーイ」にまつわる物品も全て廃棄・隠蔽。この家族は最初から5人家族ではなく「4人家族」だったように見せかける工作が出来た。

クローン体の生成には17日間かかる。キアヌは家族のスマホや PC を巧みに操作してアリバイを作った。

17日かけて、3体のクローン人間の人体が生成できた。人体の複製自体は成功。見た目は元の家族そのままである。あとはこの身体に移植する「意識」が問題だが、キアヌはこの問題を解決できずにいた。仕方なく、意識のない身体には鎮静剤を打ち、時間を稼ぐことにした。

鎮静剤によって眠っている、意識のないクローン人間の身体に点滴を与えるキアヌ。そこでキアヌは、意識がないにも関わらず、肌を触れられると脳に反応があることに気が付く。つまり、これまでは「ロボットの身体」に意識を埋め込んでいたため適合できなかったわけで、生身の人間の身体であれば、意識はすんなり身体を受け入れられるはずだ、と考えたのだ。イチかバチか、意識をクローン人間の身体に移植してみたところ、見事成功。キアヌと同僚は、記憶や意識も元どおりの完全なクローン人間が生成できたのだった。

翌日、クローンの家族たちは今までどおり起床し、食事を取っていた。キアヌが安堵したのも束の間、研究所から呼び出しをかけられ、クローン家族を自宅に残して仕事に向かう。

家族を複製している間、欠勤が続いていたキアヌは、上司オーティスから目を付けられており、「次の実験で成果が出なければ最後だぞ」と忠告されていた。キアヌは移植対象の遺体の意識を利用するのではなく、自分自身の意識を抽出し、これを改変して「機械の体を受け入れるアルゴリズム」を実装した。科学者である自分が、そのようなアルゴリズムを持って意識を移植されれば、すんなり受け入れて実験は成功に見えるだろう、と考えたワケだ。

自宅に戻ったキアヌは、クローン家族のそれぞれに問題が発生していることが分かる。妻は胸に痛みを感じ (自動車事故の際、胸に木が刺さって即死していたため)、娘は母親が死ぬ悪夢にうなされていた (死の直前の記憶)。キアヌは寝ている娘の脳に装置を繋ぎ、事故直前の記憶を抹消した。しかしその現場を妻に見られてしまう。観念したキアヌは、妻たちがクローンであることを妻だけに打ち明ける。妻はショックを受けるが、「目の前で家族が死んで、救う方法があると分かっていたら、君だったらどうしていた?」と辛い心中を打ち明けるキアヌ。

翌日、娘は「ゾーイって誰?」と尋ねる。家の中にあった物品などから、末っ子ゾーイの存在を消しきれておらず、家族は不審に感じ始めていたのだ。

そこに研究所の上司オーティスが訪問する。彼はキアヌがこっそりクローン家族を作り出したことを知っていた。表向きは医療関係の企業だったが、実はクローン技術を軍事利用するための会社であることを明かし、クローン家族やアルゴリズムを渡せと要求する。

キアヌはオーティスを殴り倒し、家族とともにクルマで逃走する。しかし家族が追手に捕まり、研究所に連れ去られてしまう。キアヌも研究所に駆けつけると、そこには同僚トーマスがいた。彼が遺体を処理しようとしたところ、上司オーティスに見つかり、一連の事態を知られてしまっていたようだ。

するとオーティスはトーマスを射殺。キアヌは仕方なくアルゴリズムを渡すことにする。キアヌは先日取り出していた自分の意識にアルゴリズムを埋め込み、それをロボットの身体と人工脳に移植した。

起動したロボットは、上司オーティスや手下をボコボコにする。キアヌは家族を逃がした後で、ロボットを制止する。瀕死のオーティスに対し、「家族を追うな、代わりに金持ちにしてやる」と取引を持ちかける。オーティスはそれを受け入れると、亡くなってしまうのだった。

…17日後。キアヌと家族たちは南の島に逃げ出していた。そしてそこには、末っ子ゾーイのクローンがやってくるのだった。

一方、ドバイの高層ビルの一室。クローン技術で生まれ変わったオーティスは、ロボット・キアヌとともに、脳のデータをクローン体に移植する闇商売を始めていたのだった。


つーワケで、「意識・身体ともに完全なクローンが作れたとしたら」という SF でした。家族を事故で亡くしても、クローン技術で事故の直前からの記憶を引き継いで復元できるとしたら。それは「同一人物」と言って良いのか、なんというか。

この倫理観を揺さぶる問いかけが主軸にある映画で、内容はトンデモ科学だったし、アクションや CG は若干お粗末であった。トンデモ科学なところは、SF だし目をつぶってもいいかなと思うけど、2018年にあのストップモーションみたいなロボットの動きはないだろ…。ロボコップみたいだったぞ。カーチェイスも要らんし…。

完璧なクローンを作るまでのコソコソした感じと、一連のトラブルシュートのシーンはハラハラした。キアヌが泣きながらゾーイの落書きを消して存在を隠滅しようとしているシーンとか、マジで辛くなった。

ゴーグルをかけて、空中で手を振り回して UI を操作するあのビジュアルは、なんつーか「マイノリティ・リポート」みたいで今となってはもはや古い気もするが、キアヌがやるとギリギリそれっぽくなる不思議。

キアヌがやったからギリギリ見られたけど、知らん俳優がやってたら「Stasis ジャンプ」みたいな感じで、単なるガッカリ SF に終わってたかも。ギリギリ見られるので良かったらドウゾ。w