映画「I'm Still Here 容疑者、ホアキン・フェニックス」を見た

2020年、Netflix にて視聴。

2010年のドキュメンタリー映画。監督はベン・アフレックの弟、ケイシー・アフレック。ケイシーの妻はサマー・フェニックスで、その兄がホアキン・フェニックス。この兄弟の長男がリヴァー・フェニックスだ。主演のホアキン・フェニックスとケイシー・アフレックは、当時義理の兄弟関係であった。

2008年、ホアキン・フェニックスは突如として俳優引退を宣言し、ヒップホップ・アーティストとして活動を始める。デイヴィット・レターマンショーに出演したホアキンは、無精髭を生やしただらしない格好で、終始奇妙な言動を繰り返していた。さらに、ラスベガスでのライブでは、お世辞にも上手とは言い難い陳腐なラップを披露した上、ブーイングを飛ばした観客と乱闘するなどして、ホアキンは一気に世間の笑い者になった。

本作はそのホアキンの裏側に密着している。


ホアキンは音楽プロデューサーであるパフ・ダディにプロデュースを依頼しようとするも、粗末なデモ曲に呆れられ「君のプロデュースはできない」と追い返されてしまう。帰りのクルマの中でメチャクチャ恥ずかしがるも、「俳優は本来の自分じゃないんだ、音楽で本来の自分を見せたいんだ」と躍起になるホアキン。

それまで俳優業をサポートしてきた周囲の友人にまで八つ当たりを繰り返すホアキンは、ついに友人にキレられる。友人は夜な夜なホアキンの部屋に忍び込み、顔の上に糞をして立ち去った。

実際にホアキンの親友であるベン・スティラーは、ホアキンの変わりようを心配して自宅を尋ねるが、ホアキンは彼に対しても奇妙な応答を繰り返し、俳優には戻らないと強調した。ベン・スティラーはこのあと、第81回アカデミー賞授賞式に、髭面のホアキンを真似た衣装で登場して笑いを取った。

他にも、ブルース・ウィリス、ジャック・ニコルソン、モス・デフなどが彼のヒップホップ転向を信じてしまう様がドキュメンタリーに収められている。特にモス・デフは、「ボヘミアン・ラプソディをラップで歌う詩人になりたいんだ」と語るホアキンに、ポカンと口を開けて「あぁ…そう…」と答えているのが面白かった。

2009年、ラスベガスでついにラップを披露したホアキン。そのラップはお世辞にも上手とは言い難く、観客からはブーイングが飛んだ。するとホアキンは舞台を飛び降りて観客と揉み合いになる。ガードマンに連行され舞台裏に戻ったホアキンは、緊張していたのか、トイレで盛大に戻す。

世間からの風当たりに悩んだホアキンは、実家に帰り父に会う。少年時代よく遊んでいた、小さな滝がある川で泳ぎ、自分を見つめ直した。


そしてエンド・クレジットが流れる。ほとんどの人物が「【人名】…… Himself (本人)」とクレジットされる中、最後に登場したホアキンの父だけ、次のようにクレジットされていた。


……ホアキンのお父さんちゃうやん!

とゆーことで、この映画はモキュメンタリーで、ホアキンの2年間に渡る「俳優引退宣言」は全て本作のためのウソだったのである。

一番の狙いは、そのようなウソをマスコミがどのように報じるか、という実験だったようで、世間的には実際に2年間に渡って俳優活動を辞めていた。しかし、モキュメンタリー内でも描かれているように、関係者が「引退はドキュメンタリーのためのウソだ」とバラしてしまったらしく、マスコミは当初から半信半疑だったようだ。

最終的にホアキンに便をかける友人はフェイクで、便も作り物だったらしい。ラスベガス・ライブでの乱闘騒ぎやそのあとのゲロはどうだか知らないけど、恐らくでっち上げたモノなのだろう。

レターマンショーでの珍行動は、レターマンへの事前通告はなかったらしく、後で謝罪したんだとか。


うーん、なんか、セレブが金かけて遊んだ自己満足映画って感じかな。「ジム & アンディ」のような、迷惑セレブの印象しか受けなかった。