「Liminal Spaces」という概念

ここ最近、Vaporwave、Synthwave、Retro Future 系の音楽やビジュアルをザッピングしている。

そしたら、これらのよくあるビジュアル (古代ギリシャの石像だとか、ワイヤーフレームやヤシの木) などとはまたちょっと違う、

などのビジュアルが多数出てきた。

調べてみたら、こういうビジュアルは Liminal Spaces と呼ばれているようだ。

解説記事は上のページなどが分かりやすい。また、具体的な画像は以下の YouTube 動画を見ていただけると、なんとなく分かると思う。

よく知っている見慣れた場所なんだけど、どことなく不安になるような、ゾワッとするような感じを受けると思う。

Liminal Spaces、リミナル・スペースという言葉は、日本語文献が全然ない。そのため、自分の誤解や解釈間違いがあったら申し訳ないのだが、自分なりの理解をまとめておく。


「Liminal」は、ラテン語の Limen が由来で、他の英語だと Threshold、つまり「しきい」や「限界」、ないしは「境目」、「境界」を意味する形容詞。

「Liminality」と名詞形にすると、少し近い日本語文献が出てきた。

コレって、「サブリミナル効果」の「Subliminal」と同じ言葉だ。

「サブリミナル効果」が、知覚できない潜在意識に働きかける効果のことであることから、「リミナル」というのは、逆にギリギリ知覚できるモノ、ということだ。

一方、「Space」は、この場合は「Place」などと同義で「場所」を意味する。

ということで、「Liminal Spaces」とは、何か境界に位置する場所、といった意味になる。

なんとなく、傾向の想像がついてきた。


階段の吹き抜けや、空のエレベーターなどは、ある場所からある場所に移動する際に利用する、一時的な場所であり、起点と目的地との境目にある場所だ。

通常、長時間そこに滞在することはない場所だであり、普段はまじまじとその場所を眺めるようなことはないので、そうした場所の写真を眺めていると、何かが足りていないような、不安な気持ちを引き起こすらしい。

また、同じエレベーターでも、昼間に見かけるのは何ともなくても、深夜の薄暗い空間に現れるエレベーターをぼんやりと眺めていると、これまた「非日常感」というか、いつもと違うような、奇妙な・不思議な・不気味な・不安を煽るような感覚を覚えるのだ。


旅行先のホテルに着いて、人がいない薄暗い廊下を眺めると、何となく怖く感じたことがあると思う。それこそ幼少期だと、幽霊が出るんじゃないか、みたいな不安な気持ちになった経験もあるかと思う。

慣れない土地の、馴染みのない空間であり、窓もなくてちょっと閉鎖的な空間なので、まじまじと眺めていると、「ココにいるべきではない」ような感覚になる。


普段は人がいるのに、無人の空間の写真、というのも、同様に不思議な感覚を引き起こす。

誰もいない学校の廊下や、地方のマクドナルドやデパートの一角にあるようなプレイルーム、明るいのに無人のショッピングモール、がらんとしたオフィス、深夜の公園、などなど。昼間の、人がいるような場合だと何とも思わないような空間なのに、人がいなくて、ちょっと薄暗かったりすると、途端に「人の気配がないこと」の恐怖みたいなモノを感じたりする。

なんだかこう、「高熱を出して寝込んでいる時に見る変な夢」、英語でいう Fever Dream 的な感覚だ。


場所としては馴染みがあるのに、記憶の中では「場所 + 人・群衆」みたいに記憶している場所で、それなのに無人な空間の写真が出てくると、記憶をかすっているのに、なんかいつもどおりじゃない違和感を覚える、そんな気持ち悪い感覚が、Liminality であり、Liminal Spaces と呼ばれる空間になるのだろう。

前述のリンク先で閲覧できる具体例の写真を見ると、どことなく普段と違う不気味な感じを与えるためなのか、カメラのフラッシュ (ストロボ) を焚いて、妙に空間が暗く見えるような写真が多い。もしくは JPEG の画質を下げて、カラーノイズがちょっと多めな、解像度の低い、荒い写真にされていることが多い。古いデジカメの写真のような感じを演出しているのか、解像度が低い写真だと人が脳内補完して、それによって何かリミナルを刺激するのかは分からないが、ともかくなんだか不気味に見える。

なんか気持ち悪い感覚なんだけど、懐かしくもあるような、子供時代を思い出すような、ソワソワするような、そういう面白い概念だったので、皆も Liminal Spaces をググってみてほしい。