映画「Death Becomes Her 永遠に美しく…」を観た
ここ数ヶ月メンタルが死んでいて、2時間集中して映画を観るということが娯楽やリラックスにならないぐらいくたびれていた。何となく YouTube でバラエティな短時間の動画をダラ見するのは負担にならないのだが、シナリオを把握しながら画面に集中して観るというのがどうしても厳しかった。しかし、YouTube にも飽きてきたので、コメディ映画なら見られるかなと思って、試しに本作を見てみた。
1992年、アメリカ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのロバート・ゼメキス監督、音楽アラン・シルベストリ。メリル・ストリープ、ブルース・ウィリス、ゴールディ・ホーン主演。2021-06-10 視聴。
あらすじ
メリル・ストリープは落ち目の女優。同じく女優のゴールディ・ホーンとは犬猿の仲で、メリルはゴールディの彼氏で美容外科医のブルース・ウィリスを寝取ってブルースと結婚した。ブルースを奪われたゴールディは7年の間に激太りして堕落するが、「ある計画」を思いつき実行に移す。
それからさらに7年後。50代にさしかかり衰えを感じていたメリルの前に、元通り痩せて若々しく美人になったゴールディが現れる。その美しさはブルースが再びゴールディとヨリを戻してしまうほどであった。ゴールディは積年の恨みを晴らしたのだった。
対抗心を燃やすメリルは、エステ会社の社長からもらった名刺を元に、謎の美女イザベラ・ロッセリーニと出会う。彼女は秘薬によって永遠の若さを手に入れていた。メリルは大金を支払って秘薬を飲み、かつてのような若さと美貌を手に入れた。イザベラは「くれぐれも身体を大事に」と忠告するのだった。
一方、優柔不断なブルースはゴールディにそそのかされ、「メリルを殺害し自分の人生を取り戻す」というアイデアを持ち始める。そこに帰宅したメリルとブルースは口論になり、はずみでメリルを階段から突き落としてしまう。首や腕がねじれ、脈もなくなったメリルを見て、彼女が死んだものと判断したブルースだったが、直後、彼女は首が前後逆に向いたままの姿で平然と起き上がったのだった。
慌てたブルースはひとまずメリルを病院に連れて行く。医師の診断は「手や首の骨がバラバラに折れていて、体温が30度で、脈がないが、本人の意識はある」というものだった。動揺した医師は病室を出ると、心不全により突然死する (笑うところですw)。
ブルースは「これも何か神からのお告げかもしれない」などと強引に納得し、メリルとともに自宅に戻る。浪費癖のあるメリルのため、美容外科医から「死体修復師」に転身していたブルースは、そのスキルを生かしてメリルの身体を修復する。
そこに、メリルの異変に勘付いたゴールディが現れる。「早くメリルを殺しましょう」と持ちかけるゴールディの元にメリルが表れ、ゴールディの企みを知る。そしてメリルはゴールディを猟銃で撃ち飛ばす。
しかしゴールディは、腹部に大きな穴が開いた状態で平然と生きていた。メリルとゴールディは、お互いが秘薬によって「不老不死」の身体を手に入れていたことが分かる。不老不死とはすなわち、若さを取り戻すと同時に、どれだけ身体が傷ついても死ねないことを意味していた。脈がなかったりしたのは、いわゆるゾンビ状態になっていたというワケだ。
メリルとゴールディは殴り合いの喧嘩を始め、「あなたは私の歴代彼氏を全部寝取ってきたわね!」「それはあんたが私をブス呼ばわりしたからよ!」とやり合う。しかしお互いに死なない身体となっているため決着が付かない。バカらしくなった二人は過去の行いを謝罪、和解する。そしてブルースを二人の「メンテナンス技師」として永遠に抱えておくため、彼にも秘薬を飲ませようと仕向ける。
二人に気絶させられ、目を覚ましたブルースは、謎の美女イザベラに秘薬を渡されるが、「永遠に生きて、どうなるんだ?」と問い返す。二人に永遠に縛り付けられることを恐れたブルースは、死にそうになった局面でもあえて秘薬を飲まず、「いつかは老いて死ぬ」ことを選択した。メリルとゴールディは仕方なく、お互いを修復し合いながら暮らしていくことになった。
37年後。何とか逃げ出したブルースは、その後妻子に恵まれ、87歳で亡くなる。葬式に参列したメリルとゴールディだったが、その顔はボロボロのマネキン人形のようになっていた。そして弾みで階段から転げ落ちた二人は、長年の劣化がたたり、全身がバラバラに砕け散ってしまった。そんな状態になってもなお二人は死ぬことができず、生き続けるのだった。
感想
ロバート・ゼメキスの手腕が光る作品。鏡を効果的に使ったカメラアングルが多い。随所に ILM の CG 技術が使われているが、1992年当時なので、フル CG ではなく、アナログな特殊効果も多くみられる。コレが逆に、2021年に見ても嘘臭く見えないクオリティを保っていると思う。ILM としてはオプティカル・プリンタを使った最後の作品らしい。
ロバート・ゼメキスらしい細かなネタ、伏線回収も多く、繰り返し見ても楽しめると思う。
- メリル・ストリープが「マデリーン」、ゴールディ・ホーンが「ヘレン」という役名なのだが、お互いを「マッド (Mad)」「ヘル (Hell)」と呼び合っていて、皮肉が効いている。
- ブルース・ウィリス演じるアーネストはダーツが趣味だが、年老いて腕が鈍っていた。しかし「謎の美女」にお試しで (ブルース・ウィリス本人の利き手でもある) 左手に秘薬を垂らしたことで、左手だけが若返る。その直後、秘薬を飲むことを拒否して逃げ出すのだが、若返って精度が戻った左手を使ってモノを投げ、見事に壁のスイッチを押すことに成功する。
- 謎の美女が住む館では、時折「秘密クラブ」の集まりが開催されていて、そこにマリリン・モンローやエルビス・プレスリー、ジェームス・ディーンなどが参加しているという小ネタが挟まっている (いずれももちろんソックリさんが演じているのだがw)。不老の姿を長く公に晒していると怪しまれてしまうので、引退したり死を偽装したりして後はヒッソリ暮らしましょう、というのが「秘密クラブ」の掟になっているのだ。「一人にしてほしい」という名言で有名な女優、グレタ・ガルボも、この秘薬を使った後に隠居した、というネタに使われている。1992年の公開当時からすると、1990年に亡くなっている方なので、知名度とともにタイムリーなネタだったのだろう。
- メリルに秘密クラブを紹介したエステ会社の社長も、秘薬を使った人間で、序盤の登場時に目の様子がおかしいことが分かる。コレは既に秘薬を使ってからしばらく経っていてメンテナンスしきれていないことを表現しているようだ。また、終盤の「秘密クラブ」で、「皆様に死の偽装工作を手伝ってもらった」と感謝を述べていたりする。
よく「不老不死」や「永遠の若さ」は憧れを抱くものではあるが、いざそれが実現したとすると、「永遠に死ねない」という負の側面もある。優柔不断で女性からの誘惑に弱いブルース・ウィリスが引き起こした一連の騒動であり、ブラック・コメディではあるが、意外と深いテーマが示されている。