映画「The Player ザ・プレイヤー」を観た

2021-08-28。1992年のロバート・アルトマン監督作品。オープニングの8分8秒の長回しが有名、ということで観た。

あらすじ

主人公のティム・ロビンスは、ハリウッドの映画会社で働く重役。脚本家からの売り込みを聞いて映画化するかどうかを判断する重要な立場にいるが、映画自体に愛はなく、しかし自分のポストを守るために多忙な生活を送っていた。

彼は半年間ほど脅迫めいた手紙を受け取っており、その送り主が以前脚本を却下した脚本家、ヴィンセント・ドノフリオであろうと見当をつけた。ティムはヴィンセントの家に赴き電話をかけた。電話を取ったのは恋人のグレタ・スカッキで、彼女と不思議な会話を交わした。

その後、ティムはヴィンセントと会い、「脚本を採用してやるから脅迫状を送るのは止めろ」と言うが、ヴィンセントは怒るばかり。逆ギレしたティムははずみでヴィンセントを殺害してしまう。

しかし翌日、ティムの元に「まだ生きてるぜ」という Fax が届き、ヴィンセントが送り主ではなかったことが分かる。様子を伺うためにヴィンセントの葬式に行くと、グレタ・スカッキに声を掛けられる。葬式の場には、遠目から様子を伺う不審な男がいた。

脅迫状の送り主に呼び出されたティムは、若手脚本家の売り込みに足止めを食らい、送り主と会えずに終わる。自分の愛車にはガラガラヘビが仕込まれており、ストレスで疲弊するティム。救いを求めたティムは、グレタの家を訪れ、彼女を口説きかける。ティムは同じ会社で働く恋人のシンシア・スティーヴンソンよりも、グレタ・スカッキに惹かれていった。

ティムの映画会社には、ライバル会社から引き抜かれたピーター・ギャラガーが参画していた。彼に自分のポストを奪われるのではと危惧したティムは、先日の若手脚本家の企画をピーターに押し付ける。いかにもつまらなさそうな企画だったので、それをピーターに押し付けて失敗してもらえば、ピーターを引きずり降ろせるだろうと考えたのだ。

ティムはある日、自分を付け回していた不審な男に声を掛けられる。彼は警察官で、署に呼び出されたのだ。刑事のウーピー・ゴールドバーグからの問い掛けに、神経をすり減らしていたティムは過剰に反応してしまう。

ティムはグレタに「メキシコに行こう」と誘っていたが、空港に着いたところで行き先を急遽変更、温泉リゾート地に隠れ、そこでグレタと一線を超える。

翌日、ティムは会社から呼び出される。社長がクビになり、ティムが次期社長になれそうだというのだ。しかし同時に、「ヴィンセント殺害事件」の目撃者を名乗る老婆が現れたため、面通しに参加することになった。ティムは面通しに参加するが、目撃者の老婆の記憶は曖昧で、あろうことか警察官を指差して「彼に間違いない!」と言い張る。ティムは命拾いしたのだった。

…それから1年後。

ピーターが担当した映画は、ジュリア・ロバーツとブルース・ウィリスが出演するハッピーエンドの凡作に改変されていた。ティムの元恋人・シンシアは「何よこのつまらない作品!『有名俳優など使わない、リアリティを追求した作品にする』と意気込んでいたじゃない!」と若手脚本家に反論するが、若手脚本家は「試写会で酷評だったから書き直したんだ、コレもリアルさ」と言い放ち、すっかりハリウッドの文化に染まっているご様子。シンシアはその場でクビを言い渡されてしまう。

社長となったティムはシンシアに「君なら頑張れるさ」とテキトーなことを言い、会社を後にする。ティムは脚本家からの売り込みの電話を受ける。その脚本家は「映画会社の重役が人違いの殺人を犯すが、バレずにハッピーエンドになるっていう作品はどうだ?」と話す。ティムは「その企画を買おう」と答え、シンシアが待つ自宅に帰るのだった。

感想

ハリウッド映画界を題材にした風刺コメディ。

冒頭の長回しは、2カットが上手く繋げられていると聞いたことがあるが、未だに編集点が分からない。絵葉書がアップになったところなのかな。

ティム・ロビンスの演技良いね。心ここにあらずな感じが良い。ティムに殺されてしまった脚本家デイヴィッド・ケヘインを演じていたのが、「フルメタル・ジャケット」の微笑みデブこと、ヴィンセント・ドノフリオだった。全然雰囲気違うやんけ。

ハリウッドが舞台なだけあって、著名な俳優陣のカメオ出演が多い。カメオ出演目当てに見るのも面白いだろう。

「分かりやすい映画がウケる」「試写会での評判を元に脚本を書き直せば良い」など、どこまでも「ウケる映画」作りしか考えていないハリウッド。「25語で説明してくれ」と言われて「『卒業』のパート2だ」「ジュリア・ロバーツ主演、テキトーに環境問題を散りばめる」「とりあえずブルース・ウィリスか、メル・ギブソンを使いたい」などと売り込む始末。おもくそ皮肉っているのに、ラストではそんなジュリア・ロバーツとブルース・ウィリスが本人役で出演していて笑ってしまう。w

ハリウッド映画には作品性がない、と指摘していながら、ケヘインを殺してしまうシーンでは分かりやすいほどに赤い照明を当てたり、ティム・ロビンスとグレタ・スカッキが惹かれ合う様子はベタベタに顔面ズームアップしてみたり、「売れる映画にはセックスが必要だ」と社長が言ったかと思えばティムとグレタの濡れ場シーンが出てきたり。しかしそんな濡れ場も顔のアップでしかなく、ちゃんと下着を付けてそうなリアリティのない恋愛シーンになっていて、ベタな演出を皮肉って取り入れている。

ラストも、ティムが社長になり、グレタと結婚しているというご都合主義なハッピーエンド。「何この映画、面白いの?」と突っ込んでしまったらアウト。劇中のボニー (シンシア・スティーヴンソン) 同様、あなたもハリウッド業界からクビにされてしまうだろう。w


ティムに脅迫めいた絵葉書を送り続け、ティムの所業を企画として売り込んだ人物は誰なのか。映画上では明言されていないが、声や伏線などから、葬式で弔事を呼んでいた友人の作家、Phil フィル (Brian Brophy 演) であろう、とされている。

フィルは弔事の中で、「彼の死から学んだことを引き継ぐ」「いつかシナリオを100万ドルで売り、クソプロデューサーにケツをまくって君の恨みを晴らしてやる!」と意気込んでいる。確かに最終的に、「お前のしたことを黙っててやるから金をよこせ」と言わんばかりにティムに企画を売り込み、見事ティムに企画を買わせている。その企画そのものが「ザ・プレイヤー」だという入れ子構造。

ハリウッド業界への皮肉が効いていて、しかしそんなハリウッドが面白い、と言わんばかりの、歪んだ映画であった。面白いとかつまらないとかいう評し方をするのは難しい映画だが、見て損はない映画だった。