映画「Top Gun Maverick トップガン マーヴェリック」を観た
2022-05-27 公開の「Top Gun Maverick トップガン マーヴェリック」。2022-05-30 に劇場で吹替版を観賞してきた。
ネタバレ込みで話すので、未見の方は以降閲覧注意。
目次
前作「トップガン」のおさらい
本作は1986年公開の「Top Gun トップガン」の続編。そこで、コチラの簡単なおさらいをしておく。
前作のあらすじ
主人公マーヴェリック (トム・クルーズ演) は海軍パイロット。テクニックはあるものの、勘に頼った破天荒なパイロットとして知られていた。マーヴェリックの父もパイロットだったが、謎の死を遂げている。
マーヴェリックは相棒のグースとともに、アメリカ海軍戦闘機兵器学校・通称トップガンに参加。そこで教官のシャーロット (ケリー・マクギリス演) と禁断の恋に落ちたり、ライバルのアイスマン (ヴァル・キルマー演) と訓練成績を競い合ったりしていた。
ある日の訓練で、マーヴェリックは相棒のグースを事故で失う。自責の念にさいなまれるマーヴェリックに、父を知る中佐が父の死の真相を語る。マーヴェリックの父は仲間を助けるために自ら犠牲となっていたのだった。またグースには妻子がいたが、その妻 (メグ・ライアン演) も、マーヴェリックに復活を促すのだった。
そこに緊急出撃命令が届く。先鋒に立ったアイスマンは敵機からの猛攻に晒されてしまう。かつての自信が取り戻せないでいたマーヴェリックだが、亡き相棒グースに力をもらい、アイスマンとともに敵機を撃退。アイスマンとともに無事に生還したマーヴェリックは、優秀なパイロットへと成長を遂げるのだった。
前作について
前作はトニー・スコット監督、ジェリー・ブラッカイマー製作、音楽にハロルド・フォルターメイヤーが関わっている。
あらすじにも書いたとおり、トム・クルーズ主演の他、相棒グースはアンソニー・エドワーズ、ヒロインとしてケリー・マクギリス、ライバル役にヴァル・キルマーが出演している。その他、グースの奥さん役にメグ・ライアン、後半でマーヴェリックを支援する中尉にティム・ロビンス、さらに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のストリックランド先生としても知られるジェームズ・トールカンが出演していたりする。
映画冒頭、仲間のパイロットがパニックに陥ったところ、マーヴェリックが上手くサポートして無事生還させる。しかし、相棒のグースは事故で失ってしまう。ラストでその悲しみやトラウマを克服し、アイスマンを救うことができた、というところでマーヴェリックの成長が描かれている。
アメリカ海軍の全面協力により戦闘機が飛び交う迫力の実写映像が楽しめるが、シナリオ面では80年代らしく、恋愛シーンや青春要素を盛り込んでいて若干とっちらかっている。また、主人公マーヴェリックの操縦技術や戦闘シーンの状況についても、どのように凄いことをやっているのかが分かりにくい部分もある。トニー・スコット監督の映像美や実写にこだわった芸術性、ジェリー・ブラッカイマーが得意とする娯楽アクション、若きトム・クルーズを起用してのラブロマンス、そこに当時冷戦下での海軍の協力という堅苦しい要素が微妙に入り混じっていて、十分に成功した作品ではあるが、今見返すと粗が目立つところもある、といった印象だ。
本作のあらすじ (ネタバレあり)
それではようやく、本作の話。
マーヴェリックはこの40年間で数々の功績を積み上げながらも、未だ階級は「大佐」のまま昇進を拒んでいる。
そんな時、マーヴェリックは訓練教官として任命される。某国家の核兵器開発基地を爆破するという任務を遂行するためのパイロットの育成が目的だが、その候補生の中には相棒グースの息子、ルースター (マイルズ・テラー演) も含まれていた。
マーヴェリックはグースの妻に頼まれて、ルースターの海軍入隊を妨害していた過去があった。そのためにルースターは海軍入隊までに4年の遅れをとったとしてマーヴェリックを憎んでいた。マーヴェリックとしては、グースの息子までをも任務で失いたくないが、かといってルースターを任務から外せば一生恨まれることにもなるだろう、という板挟みで思い悩む。
マーヴェリックとルースターの因縁は他のパイロット候補生たちの知るところにもなり、特に優秀な候補生「ハングマン」とルースターはバチバチのライバル関係となる。
ルースターが候補生にいるにも関わらず、因縁のあるマーヴェリックをわざわざ訓練教官に任命したのは、かつてのライバル・アイスマンであった。アイスマンは海軍大将にまで上り詰めていたが、ガンに侵されており声を発せなくなっていた。アイスマンはマーヴェリックに「過去に囚われるな」と忠言を残し、直後亡くなってしまう。
結局マーヴェリックは、訓練教官ではなく作戦部隊のリーダとして任務に参加することになる。マーヴェリックは女性パイロットのフェニックス (モニカ・バルバロ)、メガネのボブ (ルイス・プルマン)、黒人のペイバック (ジェイ・エリス)、そしてルースターを正式メンバにし、作戦を開始する。ハングマンをはじめとする残りの候補生たちは空母で待機となった。
4機は某国の核兵器開発基地を見事爆破したが、ミサイルや敵機の猛攻が始まる。そして敵機にロックオンされたルースターを守るため、マーヴェリックが代わりに被弾する。マーヴェリックの救出は諦めて帰還せよ、と本部から命令が下るが、ルースターは単身戻ってマーヴェリックと合流する。
ともに自機を失った2人は、敵の基地に置かれている旧式の F-14 戦闘機を盗んで脱出を試みる。ルースターとの絶妙なコンビネーションで敵機をかわし続けたが、ついに絶体絶命の大ピンチ。そこに空母で待機していたはずのハングマンが登場、2人を救ったのだった。
こうして無事、一人の犠牲者も出すことなく任務を成功させた一同は空母に戻り、お互いを称え合った。
後日、マーヴェリックはペニーと P-51 プロペラ機に乗って飛び立つのだった。
感想など
上述のネタバレあらすじ解説ではバッサリカットして言及しなかったのが、ペニー・ベンジャミン (ジェニファー・コネリー演) との恋愛シーン。「ペニー・ベンジャミン」の名前は前作にも登場しており、前作時点で「元カノ」の設定。今作では訓練基地のそばのバーで再会し、再び仲を深めている。ペニーが年頃の娘と上手くやっている秘訣を聞くと「準備不足な若者だけど、信じてあげることが大切」と言われ、コレをルースターにも重ねている。また、マーヴェリック自身にも「生きて帰る理由」となる恋人を配置する、という点でペニーの存在は意味があるのだが、59歳のトムと51歳のジェニファー・コネリーのベッドシーンは誰が見たいのだろうか。w
とはいえ、恋愛シーンは前作と比べればごくわずかに抑えられており、ライバルとの青春シーンも「前作オマージュ」程度に留めてある印象。主軸はマーヴェリックの成長とトラウマ克服に置かれていて分かりやすいのだが、相棒グースを失ったトラウマの克服は前作で完了していなかったか?という気もしたり。「自分は教官という柄じゃない、生き様を見せるぐらいしか出来ない」と語るシーンがあるが、確かにそのとおりで、若手を育成するというよりは「俺の背中を見て真似ろ」というタイプだ。作戦の目標タイムを大きく短縮した「模擬演習」を披露するほど操縦技術は持っているものの、それを「教える」シーンは実は皆無。元から優秀なパイロットを引き連れて行っただけ、な感もある。w
映画冒頭は「トップガン・アンセム」に「デンジャー・ゾーン」が流れ、夕陽をバックにした空母の映像、という前作オマージュ。その後もトムがカワサキのバイクにまたがり、バーでのどんちゃん騒ぎ、ビーチでの青春シーンなど、前作のオマージュはちょくちょく出てくるが、その割合や「必然性」がかなり練られていたと思う。無駄な要素・シーンがなく、スピード感と緊張感を保ちながら、かといって観客を置き去りにするようなこともなく、前作を全く見たことがなくても大丈夫なように適切な説明がなされていたと感じる。脚本が素晴らしい。
特に、作戦や難しいポイントの説明がとても分かりやすかった。谷間を超低空飛行しないといけない、基地まで2分30秒以内に飛ばないといけない、強い G がかかるポイントが2箇所ある、ミサイルを基地のちょうどド真ん中に命中させないといけない、作戦後はほぼ確実にドッグファイト (ミサイルや敵機からの逃走) になる、という感じで、「ココでハラハラドキドキしてください!」という見どころが具体的に提示されているのは親切だと思った。前作では何がどう凄いのかがイマイチ分かりにくかったところもあるので、その反省が活かされている感じ。
そして予告編などからも分かるとおり、実際に演者達が戦闘機で高速飛行している中で撮影されたシーンがふんだんに登場し、前作以上の臨場感は物凄かった。どうも演者たちが F-18 戦闘機を「操縦」はしていないようだが、実際に強い G がかかって顔が垂れ下がる様子など生々しい映像が盛りだくさんであった (トムが実際に操縦したのは F-14 と自家所有の P-51 のシーンらしい)。作戦の設定上、谷間を超低空飛行するので、コックピットの両側の背景が高速で流れて行き、物凄いスピード感を体験できる。前作では俳優陣の顔のアップは明らかにセット撮影ばかりだったので、このリアルな映像が没入感を高めてくれていた。
2022年にもなって、1980年代のような「タフな若者」の描写はともすれば非現実的で寒くなりがちだが、本作ではそこも上手く演じられていた。実際に演者たちが過酷な訓練を体験したことが表れているのか、熱血トムに負けず劣らず、若手達の表情が熱くて良かった。
ただ、敵の軍基地にある F-14 戦闘機を盗み出すシーンは若干「ミッション・インポッシブル」状態で、「トムさん映画間違えてねえか?w」とツッコミたくなってしまった。「その顔は好きじゃない」と言われる「マーヴェリックの微笑み」シーンが何度か出てくるが、この時だけはイーサン・ハントの顔になってしまっていた気がする。懐かしの F-14 に乗り込む理由を付けるためにちょっと強引な展開。w
続編の製作権はトム・クルーズが買い取っており、本作の企画は2010年頃から徐々に上がっていたようだ。前作の監督トニー・スコットは2012年に亡くなってしまったので、本作ではジョセフ・コシンスキーが監督を務める。ジョセフ・コシンスキーは2013年に「オブリビオン」でトム・クルーズとタッグを組んでいる。
製作のジェリー・ブラッカイマー、音楽のハロルド・フォルターメイヤーも続投。音楽に関してはハンス・ジマーも協力している。
俳優陣での続投は「アイスマン」ことヴァル・キルマーのみか。ヴァル・キルマーは2015年に咽頭がんで声を喪失しているが、本作ではヴァル・キルマー本人の状況を上手く脚本に反映し、彼が続投する意味が生まれている。
上官役にジョン・ハムが登場する。「ベイビー・ドライバー」での演技が記憶に新しい。ジェニファー・コネリーとは「地球が静止する日」で共演している。
あとエド・ハリスが出てる。前作にも出てたかのような貫禄だけど、前作には出てないw。前作でグースを演じたアンソニー・エドワーズとその妻役のメグ・ライアンは、ともに前作の映像を流用したのみで続投はしていない。
マイルズ・テラー演じる「ルースター」は、グースの息子として外見がそっくりだったが、ライバルのハングマンを演じるグレン・パウエルもルースター役の候補だったそうだ。ハングマンは前作におけるアイスマン的ポジションでありながら、今度はマーヴェリックを救う側として活躍するところが面白い。
メガネの「ボブ」を演じているルイス・プルマンは、1996年の映画「インデペンデンス・デイ」で、アメリカ大統領でありながら自ら戦闘機に乗り込んだビル・プルマンの息子さんだそうで。「グースとルースター」とは違い、作品は違えど実際の親子で戦闘機に乗り込んだ経験のある、珍しい俳優であろう。w
最近は視力が低下して字幕を読むのがキツくなってきたこともあり、より映像に集中したいと思って日本語吹替で視聴したが、コレが正解だった。IMAX ではなかったが、それでも自分も一緒に戦闘機に乗り込んでいるような臨場感・没入感が凄まじく、映画館で観て良かったと思う作品だ。