積極的に報告しない部下の心理

別の職種の人と話をしていて、こんな話題になった。

しかし、この話をしていた人はその様子をそばで見ていて、次のように思ったという。

…という考えから、「何も連絡してこないとかいって怒らなくてもいいじゃん」と思ったそうだ。

自分としては、そんな考え方をする人もいるのか、と衝撃の事案だった。


もし僕がその同僚の立場だったら、次のように行動するだろう。

要するに、上司が「もう連絡しなくていいよ」と言うまでは、コチラから主体的に報告をし続けるのが普通だろう、というのが、僕の考え方である。

コレは「逐一情報を知りたいと言っていた上司のため」とか「自分が会社に与えてしまう損失や影響を心配して」とかいう思いやりの精神でもなんでもなくて、自衛のための策でしかない。もっと単純な話だ。

というワケだ。

実際、その職場の上司さんは「どうして彼は何も連絡してこないんだ?」と疑問を抱いていたのだから、件の同僚氏は進展があろうがなかろうが、一通でも上司に連絡を入れるべきだったのだ。


もう一ついうと、「進展がないなら、何も報告しなくてもいいか」という自己判断は、上司と「逐一報告してくれ」「分かりました」というやり取りをした後に、自分一人で勝手に判断した後出しの判断だ。その判断に上司は合意していないのだから、あなたの「連絡をしないことにする」という選択は、上司の意に反している可能性がある。コレがいわゆる、「勝手なことをするな」と怒られるポイントになる。

だったら、「ハイ、分かりました」と答えるのではなく、「『逐一報告』というのは、進展がなくても1・2時間おきに連絡した方が良いですか?それとも検査結果が全て分かってからの報告だけで良いですか?」というように、報告の粒度や頻度を事前に確認すればいいのだ。こういう上司との認識のすり合わせ、確認作業が、「少しは自分で考えて働いて」と望まれるポイントになる。


営業系の仕事の人なら、「僕はやってますよ」アピール、点数稼ぎのためにこういう「積極的な報告」ムーブを取ることだろう。

また、僕のようなシステムエンジニアの場合、成果物に実体がなく成果が見えにくいモノだから、「僕はこういうことをこれだけやりましたよ」という報告が、納品物の品質、自分の評価の全てになるので、やはり「積極的な報告」が重要になってくる。事務系の仕事でも同じようなモノだと思う。

しかし、もしかすると接客業とかだと、こういう「自分はちゃんとやりましたからね!!文句ないでしょ!?」的なムーブが必要な場面が少なくて、こういう緊急事態にどれだけ積極的な報告をするのが望ましいのか、感覚が違ったりするのかもしれない。

確かに、逐一上司に連絡を入れるため、時間を割いて文面を考えてメールして、というのは、労力はかかる。面倒臭いのは分かる。だが、上司から見て「やっていないように見える」ようなムーブよりは、「やっているように見える」「やる気が見られる」ムーブを見せておく方が、自分の評価も下がらないし、結果的に上司や職場全体のためになることだろう。


実際のところ、部下から報告をもらって「そんなことイチイチ報告しなくていいよ」と言ってくる上司はそうそういないと思う。

なぜなら、部下は上司一人しか見ていないが、上司は複数の部下を見ている、という視点の違いがあるからだ。

当たり前のことだが、部下にとっては、「直属の上司」というのは、一人、二人程度だ。だから、上司の動向を比較的細かく追跡できる。「あのクソ上司が、またタバコ休憩してサボってやがる」とか、「全然自分たち部下の面倒を見ていない」「あの社員だけ優遇しているように見える」というような不満は、その人ひとりを集中してウォッチできる部下の立場だから余計に目につく。

しかし、上司の立場になると、複数の部下の状況を見ながら、自分の仕事もこなさないといけない。上司といえど人間、能力には限界があるから、「一人の部下が一人の上司をウォッチしている時」のような細かな粒度では、複数の部下をウォッチすることはできない。だからどうしても「手短に結論だけ報告してくれ」と部下に言ってしまったり、一人ひとりの部下のケアが行き渡らなかったりしがちなのである。

そしてココで重要なのは、そういう上司の立場からすると、「積極的に報告してくれる部下」には時間を割き、「無口な部下」はないがしろになってしまいがちな点である。


保育園や幼稚園の先生を想像してみてほしい。20人、30人の子供が教室にいて、先生はあなた一人。

取っ組み合いの喧嘩をしている2人の子供を発見したら仲裁し、擦り傷を作ってギャン泣きしている1人の子供をあやして手当てをする。そんな中で、残り数十人の子供達に対しても本当に平等に目を配れるだろうか?

自分に背を向けて座っている別の子供は、一見大人しくしているように見えたが、実はオモチャを誤飲して静かにもがいているかもしれない。でも、「先生~コレ見て~!」とアピールしてくる別の子供についかかりっきりになってしまい、「無口な子供」へのケアが不足してしまう事態は、ありえることだろう。

子を持つ親としては「保育士さんよぉウチの子もちゃんと見ててくれよぉ」と思う気持ちも湧くが、先生も千手観音ではないので、一度にできることは限られる。そうなると一番緊急性の高そうな、目についた子供を優先してしまう瞬間というのはまぁまぁありえることだろう。


嫌な例えを出して申し訳ないが、コレと同じで、部下の立場での「報告をしないことにする」という選択は、自ら上司との距離を離し、得られたかもしれない援助を断っているのに等しいことなのだ。

「報・連・相」なんて耳タコの使い古された言葉だが、コレは部下を守るための策なのだ。どうにもならない酷いことになる前に、上司にちょくちょく報告を入れておくというのが、部下としての仕事なのだ。

だから、上司から「あれはどうなった?状況を教えてくれ」と指摘されて初めて報告しているようでは、遅すぎるのだ。上司は痺れを切らして聞きに来たワケで、「ココまで何も報告してこなかったのに『進捗遅れてます』なんか絶対言うんじゃねえぞ?」と思っているはずだ。部下がふんぞり返って「知りたいなら上司から聞きに来れば良いんだよ」と考えているのは間違いなのだ。間違えて欲しくないので何度も書くが、コレは「上司のため」とか「会社のため」というより、まずは「部下であるあなた自身が怒られないようにするため」という自衛の話だ。


僕は誰かに言われてこう思うようになったワケではないが、僕はこういう考え方で評価を得てきたし、マイナス評価を避けてきた。「何も言わないことにする」「報告しないでおくことにする」なんていう選択肢をとって、上司からプラスの評価を受けている人は見たことがない。

「コレは上司に報告しない方が良いな」なんて、人生で一度も思ったことがないので、「積極的に報告しない部下」の心理は、僕にはよく分からないのが正直な感想だ。