会議は「前回のあらすじ」と「次回予告」

ジョークみたいだなと思ったので、ジョークっぽく書く。


部下にとって、会議は「上司のための時間」であり、部下自身に得るモノは何もない。

上司はそれまでの経緯をスッカリ忘れて会議に訪れ、「何がどうなってたんだっけ?誰か説明してくれ」とまくしたてる。仕方なく、先週と同じことをまたイチから説明してやらなきゃならない。テレビ番組でいう「前回のあらすじ」と同じだ。だがテレビと違うのは、このあらすじ説明が本編以上の長さになることも稀ではない点だろう。「それって何だったっけ」「どうしてそうなってるんだ」「誰がそう決めたんだ!」全部、先週も、先々週も説明しましたよ、おじいちゃん、という感じだ。なんなら前回決まった内容を前回以上のボリュームでお届けしないと理解してもらえない時すらある。

まだマシな上司ならじっくり前回までのおさらいをして終わりだが、大抵の上司はもっとトチ狂っていて、「やっぱりそれは止めたい」だの「この決定には納得がいかん」だのとちゃぶ台返しのコンボを決めてくれる。仕事の難易度を強制的にハードモードに仕掛けてくるトラップがそこら中に張り巡らされている。だから部下はあらすじ説明を上手く誤魔化さないといけない。重箱の隅を突かれないように、複雑な経緯を隠蔽して、さも反論の余地がない簡単なことだったかのように語る必要がある。そうしないと「前々回の決定」なんて鶴の一声で簡単に覆されてしまう。

あらすじ解説は終わったかな?それはおめでとう。でも会議はあと20分しかない。あらすじ解説に40分もかかったからだ。20分で本題に移ろう。けど、上司の忘却力を見るに、議題にまつわる周辺の基礎知識から解説してあげないと本題が理解できなさそうだ。「それは何だ?」「どうしていくつもりだ?」「誰が決めるんだ?」上司は何のためにココに居るのだろう?

そんなワケで本題で決めたかったことが20分で決まるはずもない。この会議室には次の予約が入っているから、あと5分で強制的に終わらせて退出しないといけない。そこで仕方なく、「次回予告」を始めるのだ。「えー、今回は何も議題が先に進まなかったので、来週の会議ではこの議題のあらすじ説明から始めます」ってね。今日のあらすじ解説のグダグダっぷりを見ると、会議は60分ではなく90分取った方が良いかもしれない。しかしコレは甘い考えだ。上司の脳は再び忘却を始めるが、パーキンソンの第一法則だけは忘れない。すなわち、与えられた会議時間を全て満たすまであらすじ解説を要求するってワケだ。

当の上司本人は、なくした記憶を取り戻すのに1時間ヒィコラしていたので、脳に疲労が溜まって満足だ。「何だかやたらと頭が疲れた会議だった、よく頑張ったな自分」とね。「考えるのに疲れたから、今日のことはビールでも飲んでパーッと忘れて休むとしよう!」それで最初に逆戻り。


部下としてできることは、議事録を毎回きちんと書き、前回分を会議前に配っておくこと (上司は絶対読まないけど)、会議のアジェンダを予め作って知らせておき、あらすじ解説と次回予告をそれぞれ5分で切り上げると書いておくこと (上司は時間を守らないけど)、ぐらいかなぁ。バカ相手に有効策なんてないから全国あちこちで同じようなことでみんな苦しみ続けてるんだと思う。特効薬があったらぜひ教えて欲しい。

「会議そのモノが無駄だ」というのはそのとおりなのだが、会議にバカみたいに時間を取られているから仕事が進まない、という言い訳の矛先ができるので、自分の保身のためにはあながち悪いモノでもない。「だってみてくださいよ、週に14時間も会議が入ってて、その間全員出席してるんですから仕事が予定どおり進むワケないですよね?予定工数の中にこんなに会議の時間は計上されてませんでしたし、会議が長引いてるのは物分りの悪い一部の人間のせいですからね、とね。コレを言う時にはとっくにプロジェクトは破綻していて火の車なのだが、少なくとも「俺が不出来だったワケじゃない」と対外的にも示せるので、自衛策としては割と有効だったりする。

会議は自分のための時間じゃない。そういうモノなのだ。いつか昇進して会議が「自分のための時間」になった時は、コレほど迷惑をかけないように努めようじゃないか。もしくは昇進を拒否して、くだらない会議を受け入れてのらりくらりと生きていくかだ。いずれも自分の選択だ。