Google 検索時代の終焉

とりあえず「終焉」って書いておけばそれっぽいブログ記事になるんじゃないかと思って適当にタイトルは付けた。


  • ゲームやガジェット系で0年代にはよくあった「有志の作ったまとめwiki」的なユーザー目線の良質な情報がDiscord鯖に置き換わって 検索エンジンからは見えない領域 に行ってしまったのつらい
  • 個人ブログに良質な情報が蓄積される、というWebの時代 が終焉を迎えたというだけなのかもしれないとも思う。インプレッションの寡占が進んだ結果、皆情報をSNSやForumに書くようになり、独立したソースは激減しているのではないか
  • もはや検索するよりYouTubeで動画を見つける方が目的に情報にたどり着きやすい、みたいなことがよくある。テキストベースでの情報だとSNSで検索する方が情報の質は高い
  • クローズドな(深層Webにある)情報が増えると「なんだかもったいない」
  • 技術系でも「困ったことがあったら私達のDiscordで何でも質問してください!」ってやつが増えてて、クローズドな環境のほうが聞きやすいというのは確かにあるのはわかるので、ポストされたQ&Aを検索可能な情報として残す仕組みを作ったほうがよいと思う
  • Discordが活発らしく、とにかくDiscordで聞いてくれという感じっぽい
  • 最近このパターンが多くて人類がインターネット以前に戻った感じがする
  • インターネットが人生に現れたときに検索してセルフ解決することが多くて感動した
  • 今は人に聞かないとわからないほうが好まれている
  • クローズドコミュニティが好まれる風潮
  • "インターネット" というコミュニティに「オープンを知らないマジョリティ」が入ってきたから説?
  • オープンだとうざいのが来てうざいなーからのカウンターでクローズドに説
  • 検索可能性が下がるのは困る、他方でXがあまりにオープンインターネットになって嫌がらせし放題になっている

僕は1997年頃からダイアルアップ接続でインターネットに触れてきていて、本格的に「ホームページ」というモノを意識しだしたのは1999年頃、ひめニャース氏が運営していた「ポケモンだいすきクラブ」との出会いが大きかった。皆が裏技情報をメールで管理人に送り、それをホームページ上にまとめて掲載してくれる、という感じだったと思う。

フォーラムに関しては、2ちゃんねるの存在もそうだが、2003年頃に StreetTrickz.com や 3Run.co.uk といったトリッキング系のサイトに、確か XOOPS 製の掲示板がよく置かれていて、当時はそこでトリッキング動画を投稿・宣伝していた。「動画を投稿」とはいっても、YouTube や Google Video 以前の話なので、自分の借りているホスティングサーバに wmv ファイルとか mpg ファイルとかを格納して、そのリンクを知らせるというやり方だった。当時存在した Bilang.com というトリッキング系のサイトは、ユーザが投稿した動画を代わりにホスティングしてくれていて、このサイトも恐らくやり取りはメールとかだったんじゃないだろうか。

この頃までは「SNS」という概念がなくて、よくある CGI 製の掲示板はユーザ登録やユーザ認証なんて代物はなく、ハンドルネームが被ったら新たに来た人が別名を使って区別する、というような感じで、なりすまして荒らすなんて簡単なことだった。XOOPS などの海外製 Forum はユーザ登録の仕組みがあったが、コレも適当にメルアドとパスワードを決めればすぐにアカウントが作れた。投稿内容の管理などはそのサイトの管理人に委ねられるので、放置されている掲示板はよく荒らされていた。2ちゃんねるもまだこの当時は投稿に関する規制が緩く、連続投稿なんかも比較的余裕で特に罰則みたいな挙動もなかったと記憶している。

このぐらいの頃だと、まだまだ検索エンジンも発展途上というか、「ブログ時代」以前だったのでサイト数が今と比べて格段に少なく、良質なサイトは手動で「ディレクトリ型検索エンジン」に登録される時代であった。このサイトも2003年に Yahoo! ディレクトリに掲載されて喜んだものだった。「検索してすぐお目当ての情報が見つかる」という時代ではなかった。


それから、一方ではブログ文化が台頭してきて、中高生は「りある」などと呼んで日記を書き、ウェブチョットデキルな人達は各自でブログサイトを作り、従量課金 (ISDN) から定額制 (ADSL) に変わって増加したユーザ達が、こぞって情報をアウトプットできる時代がきた。Google 検索がゴチャつき始めたのは2005・2006年ぐらいから、というイメージだろうか。

もう一方では、mixi、MySpace、Last.fm など「SNS」の走りが登場しだして、特に mixi なんかのように「会員登録しないと閲覧もできない、クローズドなコミュニティ」も生まれつつあった。

日本では mixi の存在は濃かったと思う。承認制の「mixi コミュニティ」では、単にユーザ登録しただけではダメで、そのコミュニティに参加させてもらえないとフォーラムの内容も見えない、というような感じで、「知り合いだけのスペース」が容易に形成できた。今でいう Discord 鯖を個人で用意する感じに近いだろうか。

当時の技術スタックはちょっと分からないが、WordPress なんかが普及した影響なのか、Pya! などの投稿系サイトも賑わうようになった。ユーザが好きなお題を投稿し、それにコメントを付けられるようなモノ。まぁ2ちゃんねるのスレッド立てとレスみたいな関係だが、そういう構成がより簡単かつ堅牢に作れるフレームワークがよく出てきた頃だと思う。あの当時は「Web 2.0」とか言いましたっけ。

パソ通や IRC の時代を僕はほぼ知らないのだが、この頃のもっとクローズドなやり取りというと、「MSN メッセンジャー (Windows Live メッセンジャー)」だろうか。パソコンに接続できるマイクやヘッドセットを持っている人がそもそも少なくて、そんなに人口は多くなかったと思うが、本当に密に会話したい人とはそれで繋がっていたと思う。Skype はもう少し後に普及した記憶。

この時期ぐらいまでは、GeoCities や Infoseek Web なんかでウェブスペースを借りて、2ちゃんねるのスレ民たちが集まって「HTML・CSS バグ情報まとめ」みたいなまとめサイトを手動で作っていたと思う。

ちょっとダークな界隈だが、WinMX、Winny、LimeWire、Cabos、Shareaza、BitTorrent などでの「ファイル共有」が流行りだした時期でもあろうか。コレはコレで「クローズドな界隈」だったと言えるのかもしれない。


Google Video を経て YouTube が登場したのが2006年頃で、Twitter が日本で普及したのは2009~2011年あたりにかけてだろうか。最初の iPhone (3G) の日本での発売が2008年で、それ以降「ガラケー」からスマホに移行しだして、2011年に東日本大震災も経験したりして、「みんながより簡単に繋がれるウェブサービスがあるといいね」ということで、LINE、カカオトーク、Viber あたりが乱立したのもこの頃か。それまでの電子メールや PHS でのやり取りではなく、インターネットを利用して繋がるクローズドな空間 (ウェブサービス)、という意味では Twitter や LINE の普及が大きそうだ。

この頃になると、「ウェブサービスはまず会員登録して使うモノ」という感覚が一般に浸透してきたように思う。それまでって ID を作る必要のあるサービスって「面倒臭いなー」って気持ちが強かったんだけど、もう諦めの境地に入ったというか。

LINE は完全にクローズドな世界ではあったものの、「あくまで既存のリア友との連絡手段」としか思っておらず、Twitter も鍵運用とかまだ一般的ではなかったので、2010年代前半ぐらいまではまだまだインターネットはオープンだったと思う。…あ、とはいっても、「NAVER まとめ」が検索結果を汚し始めたのもこの頃か。エンタメ系の情報は特に、Google 検索汚染の被害に遭いやすかったと思う。


個人的には2013年にプログラマとして就職をして、Google 検索を使うユーザとしては相性が良い業界・分野だったこともあり、2010年代は特に Google 検索を多用していたと思う。「調べれば何でもすぐ分かる時代」だった。

2017年に転職する前後には、Qiita 人気がジワジワと盛り上がってきていたかな?Google 検索すると Qiita の記事が上位に出てくるようになってきた、という印象だが、当時はクソポエムも少なく、まだ仮想 DOM で震えてる人が若干名いたぐらいじゃなかろうか。Qiita 以外の主な情報源はブログサイトだったと思う。

この時期、僕自身含めた一般のネットユーザはあまり意識していなかったが、ブロックチェーンや P2P 通信といった技術が成熟してきて、仮想通貨が登場したり、「ダークウェブ」と呼ばれるような Tor ネットワークが出てきたりしていた時代でもある。


2020年前後から、YouTube での収益化を目指す人が増え、有益な情報が YouTube 動画へと流れていった感覚はある。ググっても出てこなかった情報が、ある動画の一部分で解説されていたりとか、そういう経験は何度かあった。

Google 検索で不十分だと思ったことはあまりないが、それは僕が就職してから10年近く経過し、「大概のことは既に知っている」「未知の情報も何となく想像がつく」ようになってきたから、あまり Google 検索を多用しなくても済むようになった、というだけかもしれない。

例えばだが、Go 言語や Rust 言語などの情報は、Java や Node.js あたりのノウハウがあちこちのサイトで大量に確認できたのと比べると、極めて数が少ないように思える。「このエラーメッセージが出た時は、このオプションをつけよう!」みたいな、軽いノリで書かれた短いブログ記事、みたいなのは本当に少ない。詳しい人が時たまブログを書いていたりもするのだが、初心者がつまづくポイントの話はもうしていなかったりして、海外の Stack Overflow を見るほうが増えたかなーという印象。

あとは GitHub の登場によって、Google 検索にはちょっと登場しにくい「GitHub Issues」などでのやり取りが増えたのかもしれない。全く検索にヒットしないワケではないのだが、どうもスター数か何かで Google のインデックスに載るかどうかが決まっているらしく、不人気なリポジトリの Issue はすぐには検索結果に出てこなかったりする。

ウェブサービスは乱立し、その代わりに個人で所有するブログというモノは段々と少なくなっていき、Google で包括的に検索するのではなく、GitHub や Twitter や Facebook など、各種ウェブサービス内に設置された検索窓で検索する方が、より目的の情報を拾いやすい、という状況が出始めてきたと思っている。


そしてこの2024年現在。ココ数年で Discord、Telegram、WhatsApp など、クローズド前提で、通信の秘匿性が高いようなツールが台頭してきた。Tor ネットワークに閉じられていた「ダークウェブ」の一部が、ウェブサービスのプラットフォームという殻に若干守られる形で、表層に出てきた印象だろうか。決して悪用するばかりではないのだが、「勝手知ったるメンツだけで集まってワイワイやる場所」を気軽に作れる、というのがウケているようだ。

というのも、Twitter や YouTube はほとんど全員がアカウントを持つようになり、スパムや迷惑アカウントも増え、鍵をかけずに運用しているとノイズが多く混じるようになってきた。仲間内の冗談のつもりで「俺はコロナ (ビールを頼ん) だ」 と言っただけで捕まってしまったり、全くの外野から余計な口出しをされたりして、ウンザリする人が増えたのだと思う。

かといって Twitter を鍵運用したり、YouTube 動画を限定公開したりしたりしても、そうするとそのプラットフォームで活動する意味がほとんどなくなってしまう。それだったらもう直接知り合いとやり取りするよ、ということで、Slack や Discord、LINE オープンチャットのようなサービスに流れていったのかなと思う。Gravity という SNS がスマホアプリに閉じているのも、それに近いかもしれない。

さすがに電話番号を直接知られると、スパム対策が鬱陶しいし、きょうび SMS (ショートメール) でやり取りすることもないだろうから、LINE アカウントを教え合うのが「ある一定ラインを超えた仲良しの印」みたいなところだと思う。しかし別に、Discord や Telegram で集まる人達と仲が良くないという意味でもなく、特に Telegram は E2EE 機能を期待してちょっと危ないやり取りに使っている人もいるんだとか。最近 CEO 捕まっちゃったけどね。

自分も2020年前後から、日本人が多く集まる Slack ワークスペースを探してたくさん加入していた時期がある。そこにいる人達は Twitter や Nostr や Bluesky などにもアカウントを持っているのだが、特定の話題に関する密なやり取りはその Slack でしか書いていなかったりして、確かに有用な知見がクローズドな場所にだけ存在しているなーという感じがした。その人達が故意に情報を隠そうとしているワケではなく、「身内とのやり取りが一番スムーズなツールを使っているだけ」という印象が強かったのだが、結果的には「有益な情報が表に出てこない」状況が出来上がっていた。

Discord も機能的には Slack と大して変わらないのだが、なんとなく、より Slack よりもクローズドな印象が強い気がする。何でだろう?イメージの問題なだけ?とにかく、Discord 上でのやり取りは Slack 同様に、Google 検索には表れない。


クローズドなプラットフォームでのやり取りが、どれだけ広く有益な情報であるか、という点は、また別の話としてあるかと思う。身内との雑談なんて他人は見えなくて構わないワケだし。

そしてもっというと、専門的で、有益な情報だからといって、世界に対してオープンにする必要が果たしてあるのか、というところもあるのかなーと。

たとえば予備校に通うと、有料だが、貴重な講義を短時間で聞ける。大学に入ると、そこでだけ大学教授が専門的な講義をしてくれる。これらは一般的に、世界中の人達に無料でオープンにされることはない。情報にも価値があり、それを必要としている人にだけ届けば良い、というのが、コレまでの動きなのだろう。

そう思えば、いっときのインターネットのように、何でもかんでも無料で簡単に情報が手に入るオープン性、というのは、今までにない異様な状態だったのかもしれない。それが望ましいあるべき姿のように感じていたけど、なぜ我々が無料でそんなに何でもかんでも知れる権利があったのだろうか。

だからこそ、インターネットにワクワクしたんだと思う。今までは本を買わないと知り得なかった、詳しい人に何とかアポを取って聞きに行かないと分かりっこなかった、そんな情報がネット上を漂っていて、無料で掴み取れる、それは特殊な・異常な光景だったから楽しく感じていたんだと思う。「そうであるべき時代が来た」ワケではなかったのかもしれない。


この25年ほどで、インターネット人口が爆発的に増えたということも大きいのだろう。僕自身はあまり「人の機嫌を伺って…」という行動を取らないタイプの無神経人間なので考えたことがなかったのだが、「インターネット上とはいえ、誰かに質問するのは気が引ける」とか、「丁寧なやり取りをしないと嫌われるかもしれない」とかいった、感情的な部分が影響している人も多いようである。要するに、大多数の人間に見られるオープンな場で、見当違いな質問をしたりして恥をかくのが嫌だ、というワケだ。

そういう人達は、まず気心の知れた身内に聞いて回る。正解を知っているかどうかではなく、「質問しても恥ずかしくなさそうな相手」を選ぶようだ。その次に、Discord のようなクローズドな界隈で、多くの人の目に触れることなく、こっそりと教えを乞うたりするようである。

こういう、人の感情の機微みたいなモノもあって、クローズドなコミュニティというのは歓迎される場面もあるらしい。自分はその感覚が全然なくて、なんなら目からウロコなぐらいだった。インターネットで恥とか要らなくね?って思ってるので。


ココ最近は、ChatGPT や Copilot、Perplexity など様々な AI が登場し、うまいこと Google 検索の結果を要約して教えてくれるツールも出てきた。知りたい情報の生データを、Google に聞いて取りに行く必要はもうなくなっていくのかもしれない。

最先端の技術の、専門的な知識は、クローズドな環境でやり取りされる機会が増えていくのかもしれない。もしくは収益化を図りやすい、YouTube 動画のような「テキストとしてはググりにくい方法」で共有されるのが先で、ググラビリティを考えて何でもかんでも文字で残そう、というスタンスは廃れていくのかもしれない。

かつてのインターネットで得られた、「特別な情報にタダ乗りできている感覚」が僕は好きだったし、自分もその発信側に回れたらいいなと思ってブログを書いたりしてきたけども、世間的な流行りとはズレていくのかもしれないなぁ。Google AdSense とかで副収入をちょこっとでも得られたらそれはそれで嬉しいけども、それが主目的ではなくて、自分の脳ミソを世界中にオープンにしたい、自分が持つ情報をインターネット上に共有したい、という欲求がある「世代」なのだと思うので、僕はもう少しインターネットの片隅でホームページを作り続けていくかなーと思っている。