映画「Mission Impossible Final Reckoning」を観てきた

映画ミッション・インポッシブルシリーズの8作目、「ファイナル・レコニング」を、2025-05-18 の21時に観てきた。

前作「デッド・レコニング」も IMAX で鑑賞し、記事にしているのでよかったらコチラもドウゾ。

前作から登場した、世界中で猛威を振るう AI「エンティティ」は自己増殖を続けており、世界各国の核兵器施設をも乗っ取り始めていた。ルーサーお手製の「毒薬」装置を上手く使うと、「エンティティ」を捕らえて暴走を止められるので、トムは再び立ち向かう…。って感じのあらすじ。


例によってトム・クルーズのやりたいスタントありきで、アクションシーンとアクションシーンの間をシナリオで繋ぐ、という構成になっているので、ストーリー展開は相当に雑。

特に、エンジニアを生業としている僕とか、IT に興味があるような人が見た時に、「世界中で自己増殖している AI を、ある1拠点に集めて無力化する」というプロットが、すんなり理解できないんじゃないかと思った。自律型の AI が増殖しているなら、なぜそのコピーたちが自律して動かないんだ?と。天才エンジニアのルーサーが作り上げた「毒薬」のおかげ、ということなのだが、それにしてもこの映画の AI バカ過ぎじゃね? と思ってしまう。

中途半端に登場人物が多くなるも、彼らの深掘りはされることなく、トムのスタントシーンへのお膳立てのために動く駒要員という感が強い。

パッと思いつくだけでもモヤるところがコレだけ。


「ファイナル」と銘打っているだけあり、約30年に渡る本シリーズの総決算、的なまとめ方に入っていて、過去作の「伏線回収」ネタをふんだんに盛り込んだクリストファー・マッカリーの脚本力はスゴイな、頑張ったなと思った。

多少の強引さもあるが、さすが「ユージュアル・サスペクツ」の人やな~と。トムが画面上でスタントしまくって頑張ってるなら、クリストファー・マッカリーは裏で脚本を上手く繋ぎ合わせたろ!という頑張りはとても伺えた。


本作でトムが行う大きなスタントは2つあって、公開前からメイキング映像がバンバンアピールされているとおり「潜水艦に潜るシーン」と「ガブリエルを追うためセスナ機に飛び乗るシーン」なのだが。

「潜水スタント」は5作目の「ローグ・ネイション」でやりましたよね…?コチラに関しては別に極寒で潜って撮影しているワケではなく、スタジオで撮影しているし、頑張ってるのは分かるけど新鮮味に欠ける…。

セスナ機でのスタントシーンはまぁ満足。普通に見てると「えっコレどうやって操縦と撮影両立してるの!?」と驚かされるシーンもあり、迫力の IMAX シアターで観られて良かったと思う。


終始ワケ分かんなかったのはガブリエル。「ガブリエル」という役名からして「神 (AI) のメッセンジャー」的役割なワケだけど、エンティティからは「お前つっかえねぇな…」と切り捨てられてたり、それでも「俺が AI を制御して世界を征服する…!」とのたまっていたり、中途半端にイーサンを挑発して反撃されて焦った顔をしていたり、何だこの小物野郎は… (困惑) という感じ。

それこそ前作「デッドレコニング」では、AI を味方に付けたガブリエルが、イーサンたちのスパイアイテムをハックして幻影を見せたりしていたので、今作でも AI を活用して一枚上手に立ち回るシーンでもあれば良かったのだが、散々イーサンを煽っといてあんな最期かい… と、流石にツッコミを入れざるを得なかった。


世界が危機に瀕しているので、CIA、というかアメリカ政府がイーサン一人を全面バックアップ。ミッションに必要ということで空母をまるっと貸し出し、軍用ヘリで移動し、アメリカの潜水艦が持つ最新鋭の潜水スーツをお借りして、トムが一人で暴れ回る。変装マスクもなければスパイっぽい小道具もナシなのは残念だった。

ルーサーは途中退場だったけど、そもそも本作はルーサー、ベンジー、ダンローと、アクション不得意なエンジニアが多過ぎるんだよな…w。それでいて前述のとおり AI の設定から荒唐無稽なので、ベンジーが用意するデジタルガジェットも全然良く分からない。まぁスゴイんでしょう、っていう感じで軽く流される。っていうかルーサーやダンローが対処することになった重さ1トン級の核爆弾装置、ガブリエルはどうやって現地に置いたのだろうか? ガブリエルにどれだけ仲間がいたのかもよく分からないが、アイツらが地味にやってることの方がインポッシブルな気もする。


6作目「フォールアウト」でのこれでもかというヘリコプタースタントからの断崖絶壁格闘シーンで、「さすがのイーサンでも死ぬかも?!」と思わされたところからのミッション・クリアだったので、7・8作目と見ていて「イーサンは死なない」「イーサンはミッションを失敗しない」という前提ができてしまっていたのが、最大の障壁だったのではないだろうか。いや、トム・クルーズは身体を張ってるんだけど、「結局死にもしなけりゃ失敗もしないだろうしな…」と安心して見られてしまう、そんなところがあった。

セスナ機スタントの後に見事ミッションをクリアしたラストシーンでも、ルーサー (ヴィング・レイムス演) のありがたい遺言ボイスが再生されて、なんかサイエン◯ロジーへの勧誘が始まるのかと思ったし、ミッションクリア後の飲み会も今回はなくて、広場で数人と顔を合わせて立ち去るだけ。ダンロー夫妻は呼ばれてすらいなかった。「エンティティ」はある装置に閉じ込められ、その装置をイーサンが預かることになって終了するのだが、続編作ろうと思えば何度でも同じプロットで続編作れそうな予感。本当にファイナルになるんだろうか?でももう「核兵器による危機」も4作目「ゴースト・プロトコル」から繰り返し使っているネタで飽きちゃったな。


トム・クルーズは全身全霊をかけてスタントに臨み、迫力あるアクションシーンを作り上げた。クリストファー・マッカリーはそれを映画として成立させ、シリーズの総決算となる「伏線回収サービス」もやってのけた。間違いなくキャストやスタッフ陣の努力によって作り出されたアクション大作映画だとは思う。

しかしコレが、足掛け30年続いたシリーズの最終作になるのだとしたら、ウ~ン、どうなんだろう。ストーリー展開というか、キャラクターの成長とか、そういう点で、物足りなさを感じてしまった。でももう後は宇宙行くぐらいしかやること残ってないかもね?

「ワイルドスピード」シリーズも個人的には「5作目の MEGA MAX あたりまで」で付いてくのがやっとで、6~10作目は何してましたっけ?という感じなので、長寿フランチャイズになるともうインフレしまくってどこかでスッパリやめるしかないのかなー、なんて思ったり。

169分という上映時間を考えると、前作「デッドレコニング」よりもテンポよく、疲れずに見られたな~という印象なので、1度観る分には楽しめそう。何度も見返すことはないかもしれない…。