映画「Mark Felt ザ・シークレットマン」を見た
2021-09-18。原題は「Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House」。2017年の映画。
あらすじ
1972年に発生した「ウォーターゲート事件」の裏で、匿名の情報提供者「ディープ・スロート」の正体であった、FBI 副長官マーク・フェルトの活躍を描いた作品。事実を基にした作品である。
マーク・フェルトを演じるのはリーアム・ニーソン。長年の活躍から次期 FBI 長官と目されてきたが、いざ初代 FBI 長官のエドガー・フーバーが亡くなってみると、ニクソン大統領の関係者であったパトリック・グレイが長官代理に任命されてしまった。マーク・フェルトの妻は「FBI 長官の妻になることを目指していたのにガッカリやわ~」と情緒不安定らしい。← コイツ鬱陶しいから要らん。w あとついでにマーク・フェルトの娘はヒッピー連中とつるんで家出してる。
俺が長官ちゃうんかーとガッカリするマーク・フェルトだったが、そんな折、「ウォーターゲート事件」が発生する。
この事件は簡単に言うと、共和党のニクソン (当時の大統領) が指示を出し、ライバルの民主党本部に盗聴器を仕掛けようとして実行犯が逮捕されたというモノ。当初は民主党本部に忍び込んだ理由などが不明瞭であったが、次第にニクソン大統領 (の側近) が命じた案件であることが分かり、芋づる式にニクソン自身の脱税や数々の悪事が露呈し、最終的にニクソンは大統領を辞任することになった (現職の大統領が辞任したのはコレが初だった)。
FBI という組織はホワイトハウスや CIA とは独立した捜査機関なのだが、ニクソン (= ホワイトハウスおよび CIA) の息のかかったパトリック・グレイが長官代理となったことで、FBI の捜査は長官命令で大幅に制限されてしまう。ウォーターゲート事件についても、FBI の中では「ニクソンの関係者の息がかかっている」ことは捜査で分かってきていたのだが、パトリック・グレイ長官代理から「捜査は48時間だけ」などと異様な制限が付けられ、「こんな調子ではこの国はどんどん腐敗していく!」とマーク・フェルトは嘆く。
そこでマーク・フェルトは、タイム誌やワシントン・ポストの記者に、FBI しか知り得ない機密情報を少しずつリークしていくことにした。マスコミから国民を扇動し、ホワイトハウス (ニクソンサイド) の不正を明らかにしていこうとしたのだった。
マーク・フェルトの暗躍の結果、ウォーターゲート事件の首謀者であった大統領側近のジョン・ディーンが失脚、ついにはニクソン大統領も辞任する結果となった。
また、マークはヒッピー達のコミューンから娘を探し出し連れ帰る。娘は子供を生んでいたが、快く迎え入れ、父娘の関係は修復された。
数年後、陪審審査で「あなたがディープ・スロートだったのですか?」と問われ、マークは答えるのをためらう。
感想
ウォーターゲート事件やこの時代の FBI 絡みに関しては、今までもいくつか映画化されているので、それらをセットで見ておくと色んな角度でこの事件を学び、楽しめるだろう。
- All The President's Men 大統領の陰謀
- 1976年作。ワシントン・ポスト記者目線。本作を「表側」から見たような映画なので、コチラを先に見ておくと良いだろう
- Post ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
- 2017年作。ウォーターゲート事件の直前、ワシントン・ポストが機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」をリークしてホワイトハウスと争った時の話。本作からすると前日譚のような作品なので、先に見ておくと繋がりが分かりやすい
- J. Edgar J・エドガー
- 2011年作。本作では冒頭に亡くなってしまうフーバー長官の生涯を描いた作品。あんまり政治色は強くないが、時代背景や FBI の当時の様子が分かる
マーク・フェルトは2005年に自分がディープ・スロートだったと公表するも、この頃には認知症を発症しており、2008年に亡くなっている。そのため、本作で描かれているマーク・フェルトの人物像も、どこまでが正確な事実に即しているかは微妙である。
本作でも一番描ききれていないのは、なぜマーク・フェルトがマスコミに内部告発することを決断したのか、というところで、パッと見は「FBI 内部にまでホワイトハウスによる腐敗が侵食してきていることに憤慨した」とか「独立した組織を守りたいがため」とかいう風に見えるが、マーク・フェルト自身がどれを核に捉えていたのかはイマイチ分からない。本人が真相を語る前に亡くなっているから仕方ないのだろうけど、動機が不明瞭なのである。
個人と仕事と国家を、マーク・フェルトはどう捉えていたのか。何でこの映画を2017年に作ったのか。各自が自分と重ねて見るところも多い映画だと思った。