Back To The Future 3
Scripts And Trivia
1955年のドク「わぁー!」
Part 1 のマーティ「ドック…!」
ドク「は…あぁー!やったぞー!大成功だー!」
Part 2 のマーティ「ドック!落ち着いてよ、僕だよマーティだよ」
ドク「そんなバカな、今未来に送り返したところなのに」
マーティ「そう、いや、送り返してもらったんだけどまた来たんだよ、未来から戻ってきたの」
ドク「どうして、そんなことに…」
TV「おい、今何時~?」
ドク「凄い…やったぞ…!おはようトゥデイの時間だ。1955年11月13日月曜日、午前7時1分。昨夜行ったタイムトラベルの実験は見事に成功した。午後10時4分、時計台に落雷。1.21ジゴワットの電流がタイムマシンに流れ込むや、マシンは二本の炎のレールを残して跡形もなく消えた。マシンに乗ったマーティは時空を超えて1985年に飛んでいったものと小生は確信する。その後…その後…何があったのか…分からん…どうやって帰って来たかも…。恐らく強烈な放電がタイムマシンの瞬間移動によって増幅され、私の脳波を混乱させて一時的記憶喪失を引き起こしたんだ。少し思い出したぞ、タイムマシンが未来の彼方へ消え去ったあと、マーティが現れて言った、未来から戻ってきたと…」
マーティ「ドック…」
ドク「あれは脳裏に焼き付いた幻想だろうが…」
マーティ「ドック」
ドク「あー!」
マーティ「ドック、落ち着いてよ僕だよマーティ」
ドク「そんなバカなことがあるか、未来に送り込んだのに」
マーティ「そうなんだけどまた戻ってきたんだよ未来から、ほらぁ昨夜気絶しちゃって僕がココへ運んだんだよ」
ドク「コレは現実じゃない、マーティはココにはおらん、居るワケないんだ、私は絶対信じないぞー!」
マーティ「居るんだよココに、ちゃんとワケがある。1985年からドックと一緒に戻ってきた、ビフが未来で手に入れた本を取り返すためにね。本は取り返したけど、1985年のドックはデロリアンに乗ったまま雷に打たれて、1885年に飛んでっちゃったんだよぉ」
ドク「1885年?それが本当なら実に興味深い話だ、未来少年君。だがまだ一つ合点のいかないことがある。もし未来の私が今、過去にいるとしたら、君がどうしてそれを知り得たのかだ」
マーティ「手紙が来たんだよ」
ドク「『マーティ、私の計算どおりなら、君はデロリアンが落雷を受けた直後にコレを受け取るはずだ。心配していると思うが私は元気だ。1885年に来て8ヶ月、ココで楽しく過ごしている。落雷の放電によりデロリアンのタイムサーキットに過度の負担がかかり、乱れたコンデンサの働きで私は1885年に飛ばされたのだ。この過度の負担によりタイムサーキットと飛行サーキットも破壊された。二度とこのマシンで飛ぶことはできないだろう』…空を飛ぶのか?」
マーティ「うん、21世紀に行って飛べるように改造したからね」
ドク「信じられんことだ…。『私は今鍛冶屋を開業している。来た当初マシンのタイムサーキットを直そうと始めた仕事だが、残念ながら交換すべき部品が1947年まで発明されていなかったので修理は不可能と分かった。しかし、馬の蹄鉄や馬車の修理にかけては今や熟練工だ』…1885年か、コイツはいい、私の行く末は大西部の鍛冶屋さんだぞぉ」
マーティ「僕にはショックだな…」
ドク「『デロリアンはブートヒルの古い墓地に隣接するデルガルト鉱山の廃坑に埋めた。同封の地図参照のこと。君が1955年で掘り起こすまで人目に触れず現状のまま保存されることを期待している。クルマの中に修理方法の指示書を入れておく。1955年の私の分身ならば、修理は簡単。君はそれに乗って未来に帰れるだろう。1985年に戻ったら直ちにマシンは破壊して欲しい』壊すのかね?」
マーティ「それには色々とワケがあって…」
ドク「『最後に…重ねて言うが、決して私を迎えに来ないでくれ。澄んだ空気と広々とした土地が小生大いに気に入っている。思うに不必要なタイムトラベルは宇宙時間の繋がりが断絶する危機を招くだけだ。ただ気になるのは、アインシュタインのこと』…アインシュタイン?」
マーティ「犬の名前だよ、ドックがアインシュタインって呼んでる愛犬、1985年の」
ドク「『どうかよく面倒を見てやってくれ。散歩は日に2回、缶詰のドッグフードが好物だ。私の遺言と思って全てこの手紙のとおりにして欲しい。それではマーティ、とうとう君に別れを言う時が来たようだ。君は常に誠実で優しい友達で、私の人生を大きく変えた。君との友情は小生の宝だ、数々の楽しい思い出を、いつまでも大切にこの胸にしまっておこう。真実の友、ドクター・エメット・ブラウン。1885年9月1日』…はぁ、自分で感動するなんて変な話だな」
マーティ「あぁ、本当に素晴らしいよ」
コペルニクス「クゥーン…」
ドク「あぁ大丈夫だよコペルニクス。お前は心配しなくてもいい」
マーティ「ドックが過去に閉じ込められたのは僕のせいだよ、ビフに弱みを握られるようなことをして…」
ドク「開拓時代の西部ならそう悲観したもんでもない、コレが中世の暗黒時代ともなれば異教徒か何かに焼き殺されるとも限らんがね。地図を見てみよう。コレによるとタイムマシンが埋まっているのは廃坑の横穴だ。爆弾で吹っ飛ばすか」
マーティ「すげぇや、死人も目を覚ましそうな爆発だったね」
ドク「カメラを持ってきた、一部始終を記録しておけ。…地球の中心を目指した初めての探検を思い出すよ。当時ジュール・ヴェルヌの小説に夢中でね、準備に一週間かけたがこの半分にも達しなかった。もっとも、まだ12歳だったがね。とにかく、ジュール・ヴェルヌの小説が、私の人生に大きな影響を与えた。海底2万マイルを読んだのが11歳の時、自分は一生科学に身を捧げようと決めた…」
マーティ「ねぇ、ちょっと、コレ見て」
ドク「私のイニシャル!地球の中心を目指した時とソックリだ!きっとタイムマシンはこの壁の向こうにある!…あぁ、70年と2ヶ月13日、ずっとココに埋もれていたのか、驚きだな」
- E.L.B.
マーティ「『見てのとおり稲妻によってタイムサーキットをコントロールするマイクロチップがショートしてしまった。付属のせ…』せ…」
ドク「設計図」
マーティ「『設計図を参考に、1955年製の部品を使って、コレに代わる装置を作ればタイムマシンは元通り完璧に機能する』」
ドク「信じられんな、こんなちっぽけな部品が致命傷になるとは…。こりゃそうだ、メイド・イン・ジャパンだよ」
マーティ「何言ってんのドック?良いモノは皆日本製だよ?」
ドク「とても信じられん。…子供の頃、大きくなったらカウボーイになりたいと思っていた。自分が将来、過去で暮らすと分かってみると、余生を送るにはうってつけな気がするな。今思ったんだが、1885年に行けば、私は歴史に名を残しているかもしれん。そうだマーティ、図書館に行って昔の新聞の記録を調べてみるか」
マーティ「よしなよドック、先のことは分からない方が良いって自分でいつも言ってるじゃない」
ドク「そうだったな、もうかなり知り過ぎている。自分の運命を暴いたところで何の得もない。止めておこう。コペルニクス!さぁ帰るぞ!」
マーティ「あぁ僕呼んでくる。コペルニクス!もう帰るぞ!何やってるんだ、どうした、ほら、おいで」
※ エメット・ブラウン没 1885年9月7日
マーティ「ドック!ドック!来てよ、早く!」
ドク「どうした、幽霊でも見たような顔して」
マーティ「そういうことになるかも…」
ドク「う…!これは…!」
マーティ「ドックのお墓だよ。死んだのは1885年9月7日、あの手紙を書いた1週間後だ。『クララ、永遠の愛のためにこれを建てる』クララって誰だよ!」
ドク「マーティ止めてくれ、そこに立つのは!」
マーティ「あぁいけねぇ!ごめんなさい!これ写真撮っとこ」
ドク「『80ドルを巡る争いでビュフォード・タネンに背後から撃たれて死亡』…コレが私の未来だというのか!?」
マーティ「『ビュフォード・タネンは名うてのガンマン、気性が荒く、よだれを垂らす癖があったことからマッド・ドッグの異名を取る。早撃ちを得意とし自称12人を殺した。ただしインディアンは含まれない』」
ドク「私も入っているのかい、その12人に」
マーティ「待って、『しかし1884年に気に食わない記事を新聞に載せたと編集者を撃ち殺して以来、彼に関する正確な記録がなく、コレを実証する資料は残っていない』だって」
ドク「見てくれ、ウィリアム・マクフライの一家とある。君の祖先か?」
マーティ「ひいおじいちゃんの名前はウィリアムだけど…。この人だ、僕とソックリ!」
ドク「マクフライはいたがブラウンはいない」
マーティ「きっと間違いだよ、あれはドックのお墓じゃなくて、同姓同名の別人かもしれないさ。この時代に先祖がココにいた?」
ドク「ヒル・バレーに来たのは1908年。先祖はフォン・ブラウンといった。第一次大戦中に父が改名した」
マーティ「ドック、見て」
ドク「おぉ…!何てことだ、私だ!まぎれもなく、全て真実だ。私は過去に行って、殺された…」
マーティ「いや、そうはならないさ。デロリアンのタイムサーキットを直して、新しいタイヤを付けてくれたら、僕が1885年に行ってドックを連れ戻す!」
ドク「服は着たか?」
マーティ「あぁピッタリ!でもブーツはキツくて嫌だよコレ。けどこんな格好で良いの、本当に?」
ドク「勿論だよ、西部劇見たことないのかい」
マーティ「映画はしょっちゅう見てるけど、クリント・イーストウッドはこんなの着てないよ?」
ドク「誰だそれ?」
マーティ「あぁ、彼はまだ出てないもんね」
ドク「ブーツを履かなきゃダメだよ、1885年にそんなモノを履いて歩けるか。1955年の今だって奇妙なのに」
マーティ「あぁ分かったよ、向こうに行ったらすぐ履き替えるから」
ドク「よぉし、準備は万全だ。燃料は満タン。未来の服も積んだ。念のために余分のバッテリーも積んでおこう。トランシーバー用に使える。あぁ、宙に浮く板はどうする?」
マーティ「ホバーボードね、持っていくよ。ココからヒル・バレーまで歩くの?随分ありそうだなぁ」
ドク「ココが一番安全なんだ、人口の密集地に着陸させるワケにはいかんだろ、どんな地形か分からんところはなお悪い。大木に突っ込んで一巻の終わりなんてことにもなりかねん。この辺りだったらだだっ広い平野だ。着陸してから滑走スペースも十分ある。いいか、コレから行くところには道なんかない。この先に小さな洞穴がある。マシンを隠しておくにはうってつけだ。さぁ、新しいタイムコントロール装置が温まったぞ。タイムサーキット ON。あの手紙の日付は9月1日だから翌日に合わせよう。1885年9月2日、午前8時。私が殺されたのは7日。5日以内に探し出せ、手紙に鍛冶屋をやってるとあるからどこかに店があるはずだ。いいか、発進したら一気に時速88マイルまで加速して、あのスクリーンに向かって突進しろ」
- 細部 : タイムサーキットの表示は `SEP 02 1885`
マーティ「待ってよ、スクリーンを突き破ってあのインディアンの中に飛び込めっての?」
ドク「マーティ、四次元の旅ってことを忘れるな。君は1885年に瞬間移動する、そこにはあのインディアンはもういない」
マーティ「…本当に?」
ドク「それじゃあ、成功を祈る、私達のために。未来で会おう」
マーティ「…過去で、だろ?」
ドク「そのとおり!スタートラインに付いて…良いかマーティ!」
マーティ「こっちは OK!」
ドク「用意!」
マーティ「はいよーシルバー!」
ドク「スタート!さようならー元気でなー!」
マーティ「インディアンだー!うわー!洞穴だ!」
騎兵隊「突撃ー!」
マーティ「今度は騎兵隊だ!…燃料タンクに穴が…うわー!」
シェイマス「マギー、水を持ってきてくれ、人が倒れてる」
マーティ「…ママ?ママなの?」
マギー「気が付いたのね?あなた6時間も眠り続けてたのよ?」
マーティ「なんか恐ろしい夢見ちゃって…。僕さ、西部の荒野にいるの。インディアンの大群に追われて、怖かった…クマにも…」
マギー「もう大丈夫よ、このマクフライ農場にいれば安全だから」
マーティ「マクフライ農場!?わぁ!じゃああんたは…僕の…君誰?」
マギー「マクフライよ?マギー・マクフライ」
マーティ「マクフライ…マギー?」
マギー「ミセス・マクフライ。いっときますけど人妻ですからね。あなたお名前は?」
マーティ「僕はマー…。あの…。…イーストウッド。そう、僕、クリント・イーストウッド」
マギー「頭を打ったのね、イーストウッドさん。ひどくはないようだけどシェイマスが見付けたのは運が良かったわ」
マーティ「え、シェイマスって誰?」
マギー「ウチの主人よ。休んでて、私ウィリアムを見てやらなきゃ」
マーティ「ウィリアム…?」
マギー「はいはい、おっきしたのね~。ほーら、いい子いい子」
マーティ「その子がウィリアム?」
マギー「えぇそう、ウィリアム・ショーン・マクフライ。我が家の初めてのアメリカで生まれた子よ。泣かなくて良いのよウィリー、あの人はクリント・イーストウッドさん、ウチのお客様。この子あなたが気に入ったみたいねぇ」
シェイマス「ただいま」
マギー「おかえりなさい」
シェイマス「夕飯取ってきたぞ。…別に人様のことを詮索する気はないんだがね、それにしてもこんなところに馬なしで一体どうやって来たんだ?ブーツもなしに。帽子もだ」
マーティ「その…クルマ…馬が潰れちゃってさ、ブーツはクマに取られた、帽子のことは忘れたよ」
マギー「帽子を忘れる人なんて居るかしら?お水入れましょうか?」
マーティ「えぇ」
シェイマス「これも何かの縁だ、イーストウッドさん。鍛冶屋の友達を探すのを手伝うよ。今夜はウチの納屋に泊まると良い。明日一番に鉄道の線路まで送ろう。それを伝っていけば町に出られる。帽子は私のをあげよう」
マギー「はぁ」
マーティ「それはどうも、ご親切に」
シェイマス「よーはっはっは、ウィリアムのヤツ起きたか、よーしウィリー、おいで。なぁに、納屋の寝心地は悪くないはずだよ、ウチの豚から苦情が出たことはないから」
マギー「あなた、ちょっと話があるの」
シェイマス「何…。ちょっと抱いててくれないか」
マギー「あなたどういうつもり?見ず知らずの若い男をウチに泊めるなんて。私心配だわ」
シェイマス「分かってるがどうにも気になって仕方がないんだマギー。あの男のために何かしてやりたい、そうすべきだと思う。ほらあの子を見てごらんよ。知らない人には絶対懐かないのに、まるで親戚みたいに安心しきってるじゃないか」
マーティ「やぁウィリー。君は僕のひいおじいさんだ。マクフライ家、アメリカ生まれの第一号。…親愛の印?」
※ ヒルバレー駅
※ 馬のご用は正直者のスタットラーに
※ 風呂屋
※ ヒルバレー・フェスティバル 9月5日 土曜日 時計台完成 前夜祭
※ 葬儀屋
※ 保安官事務所「縛り首執行のため出張中」
マーティ「うわぁ!…ばっちぃ…」
爺さん1「おい見ろ今入ってきたヤツ!何だありゃ!?」
爺さん2「サーカスが町に来てるとは知らなかったな」
爺さん3「シャツを剥ぎ取ったら中身は白い子豚ってところか、アッハッハ」
バーテン「何にする?若いの」
マーティ「そうね、それじゃ…冷たい水」
爺さん1「水だとよ、アッハッハ」
バーテン「水だって?水が欲しければ外の飼葉桶に首突っ込んで飲むんだな。ココじゃ、ウィスキーと決まってる」
マーティ「ねぇちょっと。鍛冶屋を探してるんだけど」
ビュフォード「よぉマクフライ。ココにはツラ出すなって言ったはずだぞ。…あれぇシェイマス・マクフライじゃねえな。それにしてもよく似てやがる。そのしょぼくれた帽子なんぞよ。あのヘナチョコ野郎の親類か?てめぇ名前は?」
マーティ「あぁマー…。…イーストウッド。クリント・イーストウッド」
ビュフォード「なんだその締まらねえ名前は」
ビュフォードの手下1「赤ん坊みたいなツラしてやがる」
ビュフォードの手下2「見ろ真っ白な歯、行儀よく並んでよぉ、人形みてぇ」
ビュフォードの手下3「あれ靴か?妙なモン履いてるぞ、何の革で出来てんだ?」
ビュフォードの手下2「字が書いてある、『ニーケー』だとよ、誰かインディアン語の分かるヤツ居るかぁ?」
ビュフォード「おいバーテン。例の鍛冶屋のペテン野郎探してんだ、見かけねえか?」
バーテン「あっしは知りません、タネンさん」
マーティ「タネン…?マッド・ドッグのタネンか」
ビュフォード「マッド・ドッグだと?気に食わねえな。その名前は気に食わねえんだよ。誰にもマッド・ドッグなんて呼ばせねえ!聞いてんのかてめぇ!タマゴヅラしたヘナチョコ野郎が、ナメやがって!踊れ!ほらどした!踊れ!踊ってみせろ!」
マーティ「ヘッヘッヘ…」
爺さん2「何だありゃ?」
マーティ「フォウ!」
爺さん1「逃げた方が良いぞ」
ビュフォード「野郎捕まえろ!」
ビュフォードの手下「待ちやがれ!」
ビュフォード「待てー!」
マーティ「ああぁ止めてー!」
ビュフォード「この町にも裁判所が建つ!縛り首の予行演習だ!」
マーティ「止めて…」
ビュフォードの手下「良いぞービュフォード!良い眺めだぜ~!」
ビュフォード「たまんねえなぁ縛り首なんて何年ぶりだなぁ~オイ」
ドク「500メートル離れた犬の背中のノミでも撃ち落とせるぞ、今貴様の頭に狙いを付けてる」
ビュフォード「てめぇには貸しがある」
ドク「こっちには覚えはない」
ビュフォード「馬の蹄鉄が外れた。てめぇが付けたんだぞ鍛冶屋!てめぇの責任だ!」
ドク「貴様はその手間賃を払ってないんだ、コレで五分五分だぞ」
ビュフォード「バカこけ!蹄鉄が取れたせいで俺は馬から振り落とされたんだぞ!おかげでよぉ、正気に戻るのに上等なウィスキー1本開けちまった。てめぇが払うのが筋だろ。ウィスキーの代金5ドルと、馬一頭分75ドル、合わせてな」
マーティ「ちょうど80ドルだ…」
ドク「よし蹄鉄が取れたって言うなら馬を連れて来い、付け直してやる」
ビュフォード「馬は撃ち殺してやった!」
ドク「それはお前の勝手だ、タネン」
ビュフォード「違う!てめぇのせいだ。いいか鍛冶屋、外を歩く時は後ろに気を付けろよ。いつかその脳天に弾をブチ込んでやる。行くぞ!やー!」
マーティ「ドック…!」
ドク「マーティ…。部品交換の指示を与えたのはココへ来るためじゃない、1985年へ戻れと言ったはずだ」
マーティ「分かってるけどそうも行かなくて…」
ドク「君にまた会えて嬉しいよ」
マーティ「ドック…!」
ドク「そのナリは何とかした方が良いな。それで町を歩いたんじゃ撃ち殺されても不思議はない」
マーティ「吊るされたりね」
ドク「どこのバカがそんなモノ着せたんだ」
マーティ「あんただよ」
ドク「『80ドルを巡る争いでビュフォード・タネンに背後から撃たれて死亡』…。9月7日だと!?今度の月曜日じゃないか。金を払っておけば良かった。『永遠の愛のため』って何だ?クララなんて女性は知らんぞ」
マーティ「僕だって知らないよ、てっきりドクのガールフレンドだと思ってた」
ドク「おいおい私にそんな付き合いができると思うのか、遠い過去の世界に来て、一つ間違えれば宇宙の時の流れを破壊することになる。科学者として、そんな危険なことを犯すワケにはいかんよ。今まで嫌というほど思い知らされたからな」
市長「エメット!」
ドク「市長さんだ!」
市長「やぁどうもこんちは。先週町の集会の時にあんた言っとったろ、新しい先生が赴任してきたら駅に出迎えても良いって」
ドク「えぇ行きますとも」
市長「明日の機車で着くって知らせがあったんだ。詳しいことはコレに書いてある。使い立てしてすまんな」
ドク「お安いご用ですよ」
市長「あぁそうそう、名前はミス・クレイトン。クララ・クレイトンだ」
マーティ「おめでとうドック!クララの正体が分かったね」
ドク「いいかマーティ、あり得ないことだ、私がその女性に一目惚れするってのは、ナンセンスもいいとこだ。そんなものは何の科学的根拠もない」
マーティ「科学とは関係ないんだよドック。出会った瞬間、稲妻に打たれたみたいになっちゃうんだから」
ドク「止めてくれ、バカバカしい」
マーティ「ジェニファーに初めて会った時がそうだった。お互い目を逸らすことができなくてさ。ジェニファーっていえば大丈夫かなぁ、ポーチに寝かせたまま置いてきちゃったりして」
ドク「あの子のことなら心配要らんよ、ビフから年鑑を取り戻して焼いた瞬間に時の流れは正常に戻った。1985年に戻ったらすぐに行って起こしてやればいい。おっ、マーティ、そこのバルブを回してくれ、右へいっぱいに!そうだ目一杯回して!よーし行くぞ!…アイスティーは?」
マーティ「僕いいよ。コレ製氷機?」
ドク「よし、ミス・クレイトンには自分で町に行く足を見付けてもらおう。この女性に会わなければロマンスが芽生える可能性はゼロだ」
マーティ「さすがドック」
ドク「そうと決まったら、デロリアンを引き出して未来へ出発だ」
マーティ「それがさぁ、着陸した時にタンクに穴開けちゃったから、それ塞いで燃料入れないと」
ドク「タンクは空だというのかね?」
マーティ「どうってことないじゃん融合炉を使えば」
ドク「融合炉はタイムサーキットとコンデンサに動力を送っている。だが内燃機関は普通のガソリンで動くんだ、改造前と同じように。この辺りにガソリンスタンドができるのは次の世紀まで待たなきゃならん。ガソリンなしでは、デロリアンを時速88マイルまで加速するのは不可能だ」
マーティ「じゃあどうすんの…?」
ドク「やー!そいやー!」
マーティ「24マイル!」
ドク「無駄だよマーティ、世界一速い馬を走らせたって、せいぜい時速40マイル出りゃ良いとこだ、いやぁー!」
マーティ「店で一番強いヤツって言って買ってきたんだ」
ドク「掛けてくれ。もっと吹かして!…クソゥ、マニホールドが吹っ飛んじまった。コイツは中々のモンだ。新しく作るのには一月かかる」
マーティ「一月?ドクは月曜日に殺されちゃうんだよ!?」
ドク「言われなくたって分かってるよ。いっそのこと…いや待てよ…?そうだ、急な下り坂を使えば良い。あーいやいや、ダメだ、滑らかな地面でなきゃ。すると、一番良いのは、氷だ。冬まで待てば、湖が凍る…」
マーティ「冬まで待つって何言ってんだよ、月曜まで3日しかないのに」
ドク「分かった分かった、もっと冷静に論理的に考えるんだ。自力で走らせることはできない。引っ張るのも無理だ。しかし、もし方法さえ見付かれば、押していって時速88マイルまで上げられるかもしれん。んっ…!?…あれだ!」
運転手「どのくらい出るかって?俺の最高記録は55マイルだ。コイツは聞いた話だが、向こう見ずのフランク・ファンはいつか、70マイル出したそうだ」
マーティ「もし目一杯飛ばしたら90マイル出るかなぁ?」
運転手「90!?バカな、そんなに飛ばして何の得がある?」
ドク「いや、ただ二人でちょっと賭けをしててな、理屈で考えたら行けるかね?」
運転手「そりゃまぁ、線路が真っ直ぐ伸びてる平坦なところで、後ろに列車を繋いでない時、窯をガンガンに炊いたとしたら、それこそ窯が真っ赤になるほど炊いたらの話だぜ?まーそれなら、90マイルは出るだろうよ」
ドク「今度ココを機車が通るのはいつだね?」
運転手「月曜の朝8時に来る」
ドク「ココだ!この分岐点はクレイトン峡谷まで3マイル。平坦な長い直線で、1985年にもこのままだ。ココを使って機関車でデロリアンを押すんだ。へぇ、この地図じゃショナッシュ峡谷となっている。インディアンが付けた古い呼び名かな?完璧だ。長い直線が峡谷を超えて伸びている。ヒルデールの団地のすぐ近くまで行っている」
マーティ「でもさぁ、この地図見てよ。…鉄橋がない。ねぇドック、この計画もオジャンだね。1年半待たなきゃ橋は完成しないもん」
ドク「いいや完璧だ、君は四次元の旅ってことを忘れてるな」
マーティ「またそれか、苦手なんだよ僕」
ドク「なぁいいか、1985年には鉄橋は存在してちゃんと立派に運行中だ。だからこの峡谷に達するまでにデロリアンを時速88マイルまで加速すれば、我々は瞬間的に時空を超え完成した橋の上に着陸できる。そこにはちゃんとした線路があって、そのまま悠々と峡谷を渡り切れる」
マーティ「機関車はどうなるの?」
ドク「谷へ落っこちて木端微塵だ。誰もそいつを見ることはできんがね」
クララ「あー!助けてー!誰かー!」
ドク「暴走だ!はいやー!よーし落ち着いてー!」
クララ「お願い!」
ドク「飛べ!どーどー」
クララ「どうもありがとう、あなたは命の…恩人」
ドク「私はエメット・ブラウン。あなたは…」
クララ「私…クレイトン…クララ・クレイトン」
ドク「クララ…?何と美しい名前だ。…荷物を中へ運びましょうか?」
クララ「いえ、いいんです、そのくらいは自分でできますから。すっかりお世話になってしまって」
ドク「大したことじゃありません」
マーティ「ドック、いいって言ってるんだからさ、引き上げようよ。じゃあ先生、新しい職場で頑張ってください」
ドク「クララ、壊れた馬車のことは私が馬車屋と話を付けますから、心配しないで。煎じ詰めれば私にも責任がある」
クララ「そんな…でも、本当に紳士でいらっしゃるのね、ありがとうブラウンさん。…エメット、あの、馬がヘビに驚いて暴れ出したことに感謝したいくらい、あなたに会えたんですもの。運命かもしれませんわね…。本当に、色々とありがとうございました」
ドク「どういたしまして」
クララ「きっとまたお会いできますわね?」
ドク「えぇ勿論、町で店をやってますから、私は鍛冶屋でして…いやいや、科学者でございまして」
クララ「科学を?ご専門は何かしら?天文学?化け学?」
ドク「あらゆる科学の学徒です」
マーティ「ねぇドック、もう行かなきゃ」
ドク「あぁ分かってるよ。じゃあクララ、私はもう行かないと…バーイ」
マーティ「またいつでも会えるって言ったのどういう意味?」
ドク「そりゃ通りがかりに会うこともあるだろうさ」
マーティ「あの人のドックを見る目、普通じゃなかったな」
ドク「ハッハッハ、よほど怖かったんだろうねぇ、もうちょっとでクレイトン峡谷の谷底に落ちるところだった…クレイトン峡谷…」
マーティ「そうだよ!学校で習った!女の先生の名前を取って付けたんだって。100年前に馬ごと谷へ落ちたって」
ドク「100年前といえば、今年じゃないか」
マーティ「学校じゃみんな言ってたよ、谷に落ちればいい先生がいっぱいいるって」
ドク「あぁ何てことだ、あの人は馬車もろとも谷へ落ちるはずだったんだ。私は歴史を変えるようなとんでもないことを…」
マーティ「ねぇドック、大したことじゃないよ、峡谷の名前が変わるだけじゃない。デロリアンを整備して、早いところココを抜け出そう」
ドク「あんなタイムマシンを発明したのがそもそも間違いだ、災いをもたらす以外の何物でもない」
マーティ「もしもし、こちらマーティ、聞こえますか?」
ドク「あぁ聞こえるよ」
マーティ「良かった、コレまだ使えるね」
ドク「よぉしマーティ、もう一度配置と手順を最初からおさらいだ。すまんな、こんな大雑把な模型で」
マーティ「いいや、コレで上等」
ドク「明日の晩、日曜だ、デロリアンを運んでこの分岐点上にセットする。銀山の廃坑のすぐ近くだ。分岐線はココで本線から分かれてクレイトン峡谷へ3マイル…いやいや、ショナッシュ峡谷だ。機車は月曜の朝8時に駅を出る。まずココで止めて、後ろの貨車を切り離し、線路を切り替えてハイジャック。機関車を借用してデロリアンを押して行く。私の計算ではちょうど渓谷の入口にかかるところで88マイル突破、その瞬間にもうデロリアンは1985年に戻っていて、完成された鉄橋の上を走っている」
マーティ「コレどういう意味?『ノー・リターン・ポイント』って」
ドク「言うならばギリギリの境界線だ。ココまでなら峡谷に落ちる寸前に機車は止められる。だがこの風車を過ぎたら未来か地獄だ。…さぁマーティ。プラス極に繋いで…行くぞー」
マーティ「いいよ、オッケー!」
ドク「機車が駅を出発…分岐点に近付いてきた…分岐点で止めて、線路を切り替える。デロリアンを押して走行…ぐんぐんスピードアップ…そのまま加速して、88マイル突破ー!ざっとこんな具合だ」
クララ「こんにちは。エメット…?」
ドク「クララだ。早く、覆いを掛けて!」
クララ「こんにちは」
ドク「いやぁいらっしゃい、珍しいお客さんだ」
クララ「突然ごめんなさい、お邪魔じゃなかったかしら」
ドク「いやいや、鉄道の模型をちょっとイジってただけで…」
クララ「…実はね、エメット。トランクが馬車から投げ出された時に望遠鏡が壊れてしまったらしいの。科学に興味をお持ちだって伺ったもので、あなたに修理していただけないかと思って…勿論お代はちゃんとお支払いしますから」
ドク「いやいやいや、とんでもない、あなたからお金なんかいただけません。とにかくちょっと見てみましょう」
クララ「どうやら照準がおかしくなってしまったらしいんです。ちょっと覗いてご覧になって。像がボヤけて見えるでしょう?でも少し、こうすると…」
ドク「クッキリと…鮮やかに…見える…」
マーティ「ごほん…!」
ドク「コレからすぐ修理して今夜お届け致します」
クララ「あぁでも、今夜は町のフェスティバルでしょう?私、そんな日に望遠鏡の修理を押し付けたりしちゃ申し訳ないわ。だってお二人ともフェスティバルにいらっしゃるんでしょう…?」
マーティ「いやぁ~僕達…」
ドク「いやいやいや、それは行きますとも」
クララ「あの、それでしたら、今夜フェスティバルでお会いしましょう、エメット。お邪魔しました」
マーティ「どうも…」
クララ「ありがとう、望遠鏡の修理を引き受けてくださって」
ドク「お役に立てれば喜んで」
マーティ「二人の未来が見えるよ」
- 翻訳 : すっごい望遠鏡
市長「ヒルバレーの市民の皆さん。市長であるこの私が、大いなる誇りをもって、我が町のこの時計を、ただいまココにスタートさせます。永遠に時を刻み続けることを祈って。さぁ皆さん声を出して…3、2、1、スタート!さぁフェスティバルの始まりだー!」
ドク「コレを見て一番感動しているのは我々だ」
マーティ「カメラ持ってくれば良かったよ」
カメラマン「よろしいですかな?」
ドク「せっかく撮っても誰にも見せられんのが残念だな」
マーティ「笑って、ドック」
※ 歌 : Double Back
ドク「良い音楽だね」
マーティ「あぁパンチが効いててダンスにはピッタリだ」
拳銃屋「さぁさぁ最新式の拳銃の試し打ちをやらないかー?コネチカットから直送の新製品、12ドルでどうだ!」
クララ「どうも…」
ドク「こんばんは。とても綺麗だ、クララ」
クララ「ありがとう」
ドク「どうかね…あぁ…よろしかったら、その…」
クララ「えぇ、喜んで」
拳銃屋「よぉ兄ちゃん、試し打ちやってみないか?」
マーティ「いやぁダメダメ、止めとくよ、ねぇドック…。ドックがダンスだって…!?」
拳銃屋「ねぇねぇ坊や、言っとくけどコイツは赤ん坊でも扱えるくらい安全な代物だ。そう聞けば怖かないだろ?」
マーティ「別に怖がってるワケじゃないよ」
拳銃屋「だったらほら、挑戦してみなって。いいかい、まず撃鉄を下ろして、それから…あー違う違う、手をこう、真っ直ぐ…。おーっほっほっほ…」
マーティ「ねぇ、もういっぺんやってもいい?」
拳銃屋「あぁまぁ良いだろう。…ねぇちょっと、一つ聞いて良いかな、あんな撃ち方どこで覚えたんだ?」
マーティ「ゲームセンター」
ビュフォードの手下1「ビュフォード、鍛冶屋のクソジジイ本当に居るのかい?」
ビュフォード「あぁ居るとも、今夜は町中総出だ」
保安官「あぁちょっと待った、フェスティバルの会場に入るなら、ココで武器を預かることになっている」
ビュフォード「俺様に丸腰で歩けってのかてめぇ…」
ストリックランド「私の指図だ」
ビュフォード「ストリックランド…。いつ町へ戻ってきた?」
ストリックランド「事務所の札が読めたんならコイツの意味も分かるだろう?」
ビュフォード「保安官が市民の背中にショットガン突き付けて脅すのかよ?」
ストリックランド「お前さんと同じだ、有利な立場が好きでな。銃を預けるのか?」
ビュフォード「助手の野郎をからかっただけだ。ハナから預ける気だった。なぁそうだよな!」
ビュフォードの手下「あぁそうとも!」
保安官「タネン、そのナイフもだ」
ビュフォード「ちったぁ愛想よくしろ、今日はめでてぇ日なんだ」
ストリックランド「私が心から笑えるのは、多分お前さんが縛り首になる日だろう」
保安官「楽しんでくださいよ」
ストリックランド「連中を抑えるには一歩も後へ引かず、あくまで権威を維持することだ。いいか忘れるな、権威だぞ」
ストリックランドの息子「はい、お父様」
シェイマス「やぁイーストウッド君、君も来てたのか。着るモノが前と違って落ち着いたようだね。帽子も中々良い」
マーティ「この前の服はあんまり評判が良くなかったもんでね」
マギー「そのスーツの方がお似合いよ、もっと立派に見えて」
マーティ「そう、ありがとう。へぇ~フリスビーだって。コレがオリジナルね」
シェイマス「どういう意味だ?」
マギー「珍しい名前でもないのに」
バンド「さぁ元の位置へ~、最後に皆でご挨拶!」
ビュフォードの手下1「いたぞビュフォード!」
ビュフォード「どこに?」
ビュフォードの手下1「あそこだよ、ベッピンの女と踊ってやがる」
ビュフォードの手下2「どうする気だ、ビュフォード」
ビュフォード「見てろ、この先込め銃なら背中に押し付けてぶっ放しゃ音は聞こえねえ」
ビュフォードの手下3「でも気を付けねえと、弾は一発こっきりだぜ」
ビュフォード「一発ありゃ用は足りる。…後ろに気を付けろと忠告しただろうが」
ドク「タネン、まだ早過ぎるぞ」
ビュフォード「コイツはデリンジャーだ。小さいが威力はある。この前のヤツは死ぬまで丸二日かかった。腹の中に血を流してとことん苦しみ抜いて死ぬんだ。ま、月曜の晩飯頃にはあの世に行けるだろう」
クララ「どなたか知りませんけど私達今ダンスをしてるのよ?」
ビュフォード「てめぇには似合わねえ上玉だな…よぉ紹介しろや、俺が相手するぜ」
ドク「貴様なんかには指一本触れさせるか、撃ちたきゃさっさと撃て」
ビュフォード「よぉし分かった!」
クララ「ダメよ止めて!エメット、いいの、この人と踊るから」
ビュフォード「おら、鍛冶屋のお守りをしてろ!俺はちょっくら楽しんでくるからよ。イヤッハー!たまんねぇや!」
ドク「ケダモノめ!」
クララ「パートナーが銃を持ったままじゃちっとも気分が出ないわ」
ビュフォード「じきに慣れるって。よぉ鍛冶屋!80ドルの貸しはこの女で払っても良いぜ」
ドク「ケダモノが!その人を離せ!」
ビュフォード「フォーウ!良いなぁ~、おめぇなら80ドル分は楽しめそうだ」
クララ「あーら、随分私を見くびってるのね」
ビュフォード「そうかもな…。ぬわっ!このアマ!」
ドク「くそう貴様!殺してやる!この野郎タネン…!」
ビュフォード「うるせぇ!死ぬのはてめぇだ!地獄へ送ってやる!くたばりやがれ!…てめぇ!」
マーティ「マジにトサカに来た!」
ビュフォード「…ワケの分かんねえこと抜かしやがって!コイツらをかばう度胸があんなら、俺と勝負しろ!」
マーティ「…僕の友達に構わないでくれよ」
ビュフォード「コソコソ逃げるところ見ると腰抜けか!思ったとおりだ、ヒヨッコの腰抜けが」
マーティ「誰にも、腰抜けなんて言わせないぞ」
ビュフォード「ケリ付けようじゃねえか、今ココでな」
ビュフォードの手下2「ビュフォード、今は止めとけよ、銃は預けただろ」
ビュフォード「よしじゃあこのケリは明日付けるからな」
ビュフォードの手下1「明日はパインシティの駅馬車を襲うって決めたろ?」
ビュフォード「月曜はどうだ、何かあったか?」
ビュフォードの手下2「いいや、月曜は空いてっからちょうど良いな」
ビュフォード「月曜にまた来るから忘れるなよ!ケリを付けるんだ、酒場の前の、大通りで。約束だぞ、良いな?」
マーティ「分かったよ、時間は?真昼の決闘?」
ビュフォード「昼?俺は殺しは朝飯前にやる。7時に待ってろ」
マーティ「…8時にしよう。殺しをやるなら朝飯食ってからだ」
ドク「マーティ…!」
ストリックランド「そこで何やってる、何の騒ぎだ?また揉め事か、タネン」
ビュフォード「揉め事なんかねえさ、個人的なことだ、コイツと俺だけの。役人の出る幕じゃねえ」
ストリックランド「今夜はそうはいかんぞ、揉め事は一切許さん、喧嘩をしたものは50日間州立刑務所行きだ。さぁ皆さん、今日はフェスティバルだ、賑やかに楽しくやりましょう!」
ビュフォード「月曜の朝8時だ、もし来なかったら、あの世の果てまで追っていってぶっ殺してやる」
ビュフォードの手下2「ちょっと違ったな、『地獄の果てまで』だろ」
ビュフォード「引き上げるぞオラ!こんなとこクソ面白くもねえや!」
ドク「なんだって決闘の約束なんか…」
マーティ「大丈夫だよ心配しなくたって、月曜の朝8時だよ?僕達未来へサヨナラさ」
ドク「予定はそうなんだが、もし機車が遅れたら…」
マーティ「遅れる…?」
ドク「この話は後でだ」
クララ「さっきはありがとう、危ないところを助けてくださって」
マーティ「いやぁそんな…」
クララ「あなたがいなかったらエメットは撃たれてたわ」
ドク「マーティ、あ、いやいやクリント、私はこの人を送っていくから」
マーティ「そう、じゃあ」
見物人1「いやぁあんた立派だったよイーストウッドさん、あのならず者に堂々と立ち向かってゆくあんたを見て本当に嬉しかった」
見物人2「そうなんだ、私も感激してね、ぜひ一杯奢らせてくれ」
マーティ「悪いけど今は…」
拳銃屋「大将!この新品のガンベルトとコルト、あんたに使って欲しくてね、金は要らん!」
マーティ「僕に…?」
拳銃屋「ならず者のビュフォード・タネンを撃った銃がウチの新型コルトだって町中の皆に吹聴できる!」
マーティ「いいよ、うんと宣伝して、ありがとう」
拳銃屋「あぁ勿論、もしあんたが負けた時は、返してもらうけどね」
マーティ「どうもありがとう」
シェイマス「君は罠にハマったんだよ、知らん顔して立ち去っても誰も非難はしないのに。奴の口から出る言葉は罠にハメるための虚仮威しさ。それにまんまと乗せられて、君は馬鹿げたゲームに引きずり込まれた、奴のルールでやる、奴のゲームにね」
マーティ「そんなこと僕だってちゃんと分かってるさ」
マギー「マーチンのことを思い出すわ」
シェイマス「あぁ…」
マーティ「誰?」
シェイマス「弟だ」
マーティ「ちょっと待ってよ、マーチンっていう弟がいるの?」
シェイマス「もう死んだよ。人に煽られるとすぐ喧嘩をしてね、拒めば臆病だと思われる、それしか頭にないんだ。挙句にナイフで刺されて命を落とした、バージニアシティの酒場で。アイツは多分将来のことなんか一度も考えたことはなかったんだ」
マギー「あなたも、将来のことを考えてやってるんでしょうね」
マーティ「あぁ、いつだって考えてるさ」
クララ「北西寄りの真ん中あたりにあるクレーター、隕石の跡みたいに孤立してるでしょう?」
ドク「あぁ」
クララ「それはコペルニクスと呼ばれてるの。…私ったらまるで授業してるみたいね」
ドク「ハッハ、いやいや、もっと聞きたい。授業を続けて。月の地形がそんなに面白いモノとは知らなかったよ。君は詳しいんだね」
クララ「私11歳の時にジフテリアにかかって一月隔離されたの。それで父がこの望遠鏡をベッドのそばに据え付けてくれて、星を見てると楽しいよって。ねぇエメット、いつか人類は機車で旅行するみたいに、自由に月へ行けるようになるかしら?」
ドク「勿論さ、あと84年はかかるだろうけど、機車じゃなくて、宇宙船やカプセルをロケットで打ち上げるんだよ。そいつは恐ろしく大きな爆発を起こす装置で…」
クララ「『それは、地球の引力をも断ち切って発射物を宇宙へ送り出すものだ』…エメット、私もその本読んだのよ、ジュール・ヴェルヌの『地球から月まで』からの引用でしょう?」
ドク「君、ジュール・ヴェルヌを読んだのかい?」
クララ「私大好きなの、ジュール・ヴェルヌ」
ドク「あぁ私もだ、中でも一番の愛読書は『海底2万マイル』、初めて読んだのは子供の頃でどうしてもニモ艦長に会いたくてね」
クララ「エメットったらからかって、子供の頃に読んでるはずないわ、だって初版が出たのは10年前よ?」
ドク「そう…でもアレを読むと、いつも子供の気分に帰るんだよ。初めてだよ、ジュール・ヴェルヌが好きだという女性に会ったのは」
クララ「私だって…あなたのような人は初めて…」
マーティ「ドック?いないの?どうなっちゃってんだよ…。…俺に言ってるのか?誰に言ってんだタネン!ココには俺しかいねぇ、さぁ撃ってみろ!楽しもうじゃねえか…」
市民1「おはようイーストウッドさん」
マーティ「おはよう」
市民2「タバコどうぞ、イーストウッドさん。何かお手伝いすることがあったら言ってください」
マーティ「あぁいや、別に…タバコはあの…」
市民3「頑張ってねイーストウッドさん、皆応援してますから」
マーティ「ありがとう」
仕立て屋「おはよう、イーストウッドさん。明日のためにスーツはいかがです?」
マーティ「いやぁ、コレあるから、どうも。ドック、何してるの?」
ドク「んん、別に、ちょっと朝の空気を吸いにね。ココの朝は素晴らしい、そう思わんかね」
マーティ「あぁ素敵だよ。でもそんなことより早くデロリアンを運ばなくちゃ…。ねぇ、見てよあの墓石」
ドク「マーティ、例の写真を見せてくれ。あぁ、私の名前が消えている」
マーティ「本当?良かったじゃない!明日未来へ帰ることにしたからそれでみんな消えたんだよ」
ドク「私の名前だけだぞ、墓石と日付はそのまま残っている。どういうことだ?この写真は今日の出来事がそのまま明日へ繋がっていく時、その結果として何が起こるのかを示唆しているんだ」
マーティ「だから何…?」
仕立て屋「ちょっと失礼しますよ、サイズを測っておきたいので」
マーティ「スーツは要らないってさっきも言っただろう?」
仕立て屋「ハハ、いや、棺桶用です」
マーティ「棺桶?」
仕立て屋「掛け率は2対1で向こうが優勢、用意しておきませんとね」
ドク「どうやら私の名前ではなく墓石に刻まれるのは君の名前かもしれんぞ」
マーティ「なんてこった」
ドク「コイツはヘビーだな。どうして銃なんか下げてるんだ、まさか明日タネンと対決する気じゃ?」
マーティ「明日の朝ドックと未来へ帰るさ。でもアイツがまた喧嘩を吹っ掛けてきた時の用意はしとかなくちゃ。コッチが弱みなんか見せたら言いたい放題だ」
ドク「ちょっと悪口を言われるとすぐカッとなるのは悪い癖だ、未来の事故だってそれが原因なんだから」
マーティ「何…?未来に何があるって…?」
ドク「それは言えない、災いの元だ」
マーティ「悪いことなんだね…?僕の未来に一体何が…?」
ドク「マーティ、自分の人生に影響のあることは自ら決めなきゃならんのだよ。君は君のなすべきことをやるんだ。私も私の道を行く。…マーティ」
マーティ「何?」
ドク「私は決めたよ」
マーティ「何を?」
ドク「明日一緒には行かない」
マーティ「えぇ?」
ドク「ココに残る」
マーティ「ちょっと何言ってんだよドック」
ドク「否定してみても始まらんのだよ、クララを愛している」
マーティ「止めてよもう、ココの世界の人間じゃないんだ、僕達二人とも。ココにいたら明日殺されるかもしれないよ?この未来の写真から、墓石は消えてないんだから」
ドク「マーティ、未来は不動じゃない。変えられるモンだってことは知ってるだろう。誰でも自分の望み通りの未来を築くことができる。このたった一枚の写真で私の運命が決まってしまうワケではない。私は自分が正しいと信じられる人生を生きたい。心の底から…」
マーティ「でも、ドックはさぁ、科学者じゃないか。僕に言ったよね、何が正しいかは、『ココ』で決めるんだって」
ドク「…そのとおりだよ」
マーティ「準備完了だね」
ドク「あの人に別れだけでも言ってくる」
マーティ「でもさぁドック、理由を聞かれたら何て言うの?未来へ帰るからなんて言ったって、理解できるワケないもん。僕と一緒って分かったらなおさらだよ?ねぇドック、いっそのこと、クララも一緒に連れてったらどうかな?」
ドク「未来へか?…君の言うように、科学者として恥じない行動を取らなければな。自分の利益のために時の繋がりを破壊するような危険を犯してはいかんのだよ。この計画がうまくいって1985年に戻れたらすぐにこの忌まわしいマシンは破壊する。タイムトラベルには辛いことが多すぎる。…私だよ、クララ」
クララ「あら、エメット。中に入りません?」
ドク「いや、止めておこう、実は…」
クララ「どうなさったの?」
ドク「お別れを言いに来た」
クララ「お別れって…どこへ行くの?」
ドク「遠いところだ、君にはもう二度と会えないと思う」
クララ「エメット…?!」
ドク「クララ…君をとても愛していることは分かって欲しい、でも私はココの人間じゃない。自分の居るべきところに帰らなくては」
クララ「それは一体どこなの?」
ドク「言うワケにはいかない」
クララ「そう…。どこでも良いわ、私も連れてって」
ドク「それは出来ないんだよ…。こんな風に別れたくはないが信じて欲しい、君のことは決して忘れない。君をとても愛している」
クララ「何を言いたいのかちっとも分からないわ」
ドク「クララ…説明しても君に分かってもらえることじゃない」
クララ「お願いエメット、私知りたいの。もし本気で私を愛しているなら真実を聞かせて」
ドク「分かったよ。私は未来から来た。自分の発明したタイムマシンに乗って、明日元の時代へ帰らなきゃならない、1985年に」
クララ「ハッ…そういうこと。よく分かった。分かりすぎるほど、あなた私がジュール・ヴェルヌの作品を好きなのを知ってるから、私の喜びそうな話をして適当に誤魔化したつもりね!私がいくら世間知らずでもそんな馬鹿げた作り話にウットリするほど子供じゃないわ!あんまり人を馬鹿にしないでちょうだい!あなたが言いたかったのは、もう愛してないし、二度と会いたくないってことでしょう!?そう言ってくれた方がよっぽどマシよ」
ドク「いや、それは違う…!」
バーテン「いらっしゃい、何にする?いつものかい?」
ドク「いや、今夜は何か強いモノをぐーっと行きたい」
バーテン「強いって何?」
ドク「ウィスキーくれ」
バーテン「ウィスキー?忘れたのかい、自分が独立記念日にどうなったのか」
ドク「ウィスキーだ」
バーテン「分かったよ、お望みなら。とびきり上等のだ」
ドク「瓶を置いてってくれ」
商人「女だな?私はね、国中を回って同じような顔をした男を何千人と見てきた。だから言えるんだが、じきに忘れるさ」
ドク「とんでもない、クララは百万人に一人だ、いや、一億人に一人、無限大に一人の、我が理想の女性だが永遠に失ってしまった」
商人「私が保証するよ、他にも女はいる。この鉄条網を商いして国中回って分かったことが一つ、未来は誰にも分からん」
ドク「未来か?未来のことなら何でも教えてやる」
マーティ「ふわぁ…寝込んじゃったのか…。今何時、ドック?ドック!?」
ビュフォード「起きろ!行くぞ!いつまで寝てやがる!」
ビュフォードの手下1「まだ早いじゃねえか、何慌ててんだ」
ビュフォード「腹減った」
ドク「未来の国じゃ、馬なんてモノは使ってない。自動車と呼ばれる機械仕掛けの荷車があってな」
爺さん3「皆その、自動なんやらってのに乗ってるんじゃ、誰も歩いたり走ったりしねえのかい?」
ドク「たまには走るさ、レクリエーションのために楽しみで」
爺さん3「楽しみで走る?一体どんな楽しみだい、そりゃ」
マーティ「ドック、ドック!」
爺さん2「どのくらい飲んだんだ?」
バーテン「全然、最初に注いだきり口も付けてないよ。持ってんのが好きなんだろ」
マーティ「ドック、ねぇドック、何してんだい?」
ドク「全て失ったよ。私にはもう何もない」
マーティ「あっそう、じゃあ早く一緒に帰ろう!」
ドク「どこへ?」
マーティ「未来へ帰るんだよ!」
ドク「…そうだ!よぉし出掛けよう。じゃあ皆さんコレで、我々は機車の時間があるので」
爺さん1「鍛冶屋に乾杯!」
爺さん3「おめぇさんの未来に!」
爺さん2「アーメン」
ドク「乾杯!」
バーテン「エメット、よせ!」
マーティ「うわっ、ドック!しっかりしてよ、起きて!何杯飲んだの?」
バーテン「一杯っきりだ」
マーティ「たった一杯で?!起きてよドック」
バーテン「からっきし意気地がないんだこの男」
マーティ「コーヒーを頼むよ、ブラックで」
バーテン「ジョーイ、コーヒーだ」
駅員「どちらまで?」
クララ「8時の機車はどこまで行きますの?」
駅員「路線の終点のシスコです」
クララ「片道一枚ください」
バーテン「こうだらしない男にはコーヒー流し込んだくらいで正気には戻らんだろう」
マーティ「じゃあどうすりゃいいの?」
バーテン「ジョーイ、例の特製ジュースを作るぞ。コイツなら10分で目を覚ましてスカーっと爽快な気分になれるよ」
マーティ「10分か。なんでこういつもギリギリになっちゃうんだ?」
バーテン「さぁ、コイツで鼻を挟んでおいてやれ、それを口に差し込んで、ぐーっと一気に流し込んでやるんだい。皆下がってろ…」
ドク「ぬわー!」
マーティ「まだのびてる」
バーテン「いや、なぁに、コイツはショックのせいだよ。あと2・3分ほったらかしときゃ元通り元気になるさ」
マーティ「なら良いけど。ドック頼むから目覚ましてよ」
バーテン「シェイマス、どうしたんだ、こんな朝っぱらから」
シェイマス「あぁ、なんとなく来なきゃならないような気がしてね。私の未来に関係があるのかも」
バーテン「おい、起きろよエメット」
マーティ「ほらドック起きて、時間ないんだからさ」
ビュフォード「おい!イーストウッドは居るか!約束の8時だ!さっさと出てきやがれ!」
マーティ「まだ8時にはなってないよ!」
ビュフォード「大して変わりゃしねぇ!早いとここのケリを付けようじゃねえか!こっちはいつでもオッケーだぜ」
※ クリント・イーストウッド
マーティ「聞いて、今日はちょっとそんな気分じゃないんだ。不戦勝ってことで違約金でも払おうかな?」
ビュフォード「不戦勝?違約金だと?おい何のことだ」
ビュフォードの手下2「多分、果たし合いはナシってことだろ」
ビュフォード「ナシだと?んな馬鹿な!おい冗談じゃねえ!怖気づきやがって!果たし合いをする度胸もねえヒヨッコの腰抜けが!10数えるだけ待ってやる、悔しかったら出てきてみろってんだ!1…!」
マーティ「ドック、正気に戻ってよ、頼むからさぁ」
爺さん1「さぁ行きな若いの、お前さんに20ドル賭けてんだ、ガッカリさせねぇでくれ」
爺さん3「わしゃお前の負けに30ドル賭けてんだ、そうさせんでくれよな」
爺さん2「こうなったらもう後には引けねえな、もしココでおめぇさんが出て行かなかったら…」
マーティ「何だよ!もし出て行かなかったら?」
男1「臆病者ってこった」
男2「一生そのレッテル貼って生きてかなきゃならん」
爺さん2「どこへ行っても皆が言うだろうよ、クリント・イーストウッドってのは西部一のヒヨッコの腰抜け野郎だってな」
ビュフォード「…?7ー!」
男3「使いな」
ビュフォード「8…!」
マーティ「拳銃なら持ってるよ」
ビュフォード「9…!10…!おい聞こえてんのか!もう10数えたぞ!どうした、ヒヨッコの腰抜けの腑抜け野郎!」
マーティ「…アイツはゴミじゃないか!あんなの相手にしたってしょうがない、皆何とでも言いたいように言えば良いじゃないか!…ドック!ドック大丈夫!?」
ドク「ぁー、頭が割れるように痛い」
マーティ「ねぇ、ココ他に出口ないの?」
バーテン「あぁ裏口がある」
マーティ「行こうドック」
ビュフォード「おい出てこい!そっちが出てこねえんならコッチから行くぞ!」
ドク「身体がバラバラになりそうだ…」
ビュフォードの手下3「いたぞ!」
ビュフォードの手下1「出てこい鍛冶屋!」
商人「いやぁ全く、昨夜会った男、あれほど哀れな失恋男は私見たことないね。コレからの人生どうやって生きていきゃいいか分からんらしい。その女性を自分が傷付けてしまったと。聞いてる私まで、胸にジーンと来た」
ビュフォード「よく聞け、イーストウッド!今日は誰かぶっ殺してぇ気分なんだ!てめぇじゃなくたっていい!腰抜け野郎が出てこねぇんなら、代わりにこの鍛冶屋をヤるまでだ」
ドク「耳を貸すなマーティ、自分のことを考えろ!」
ビュフォード「今から1分だけ時間をやる!おい聞いてるな、1分だぞ!」
商人「女一人にあれだけ真剣になれるとはね。名前は何て言ったかな、カラ…サラ…」
男「クララだろ」
商人「あぁクララだ」
クララ「…失礼ですけど」
商人「何でしょう?」
クララ「その人痩せて背が高くて茶色い可愛い目をした白髪で毛の長い人?」
商人「あんた知ってるのかね?」
クララ「エメットだわ」
ビュフォード「よぉし時間切れだ。腰抜けの友達を恨むんだな」
マーティ「俺はココにいるぞ、タネン!」
ビュフォード「抜け!」
マーティ「嫌だね…!男らしく、素手で勝負しようじゃないか」
ビュフォード「そんな気はサラサラねえ。エッヘッヘッヘ、どうも皆さん~」
マーティ「とりゃ!」
ビュフォード「ぬをわぁー!」
シェイマス「いい気味だ」
ビュフォードの手下1「おい、どうする」
ビュフォードの手下2「ビュフォードはブタ箱行きだぞ」
保安官「そいつを引っ張り出せ。追え!ビュフォード・タネン。パインシティの駅馬車を襲ったかどで逮捕する。何か言うことはあるか」
ビュフォード「もう肥やしはまっぴらだ」
ドク「見ろ!」
マーティ「消えた!」
ドク「機車だ!」
マーティ「間に合うかな?」
ドク「馬を飛ばして近道を行けば…」
子供「待って、イーストウッドのおじちゃん、コレおじちゃんのでしょ?」
マーティ「ありがとう。…シェイマス。12ドルするんだ、まだ使ってない」
シェイマス「売って新しい帽子を買うよ」
マーティ「あぁ。赤ちゃんを大事にしてね」
シェイマス「分かったよ」
クララ「エメット!…タイムマシン…?」
ドク「はいやー!もっと寄って!早く手に掴まれ!」
マーティ「わぁ~っ」
ドク「早く来い、マーティ!」
マーティ「うわー!」
ドク「よぉし行くぞ!覆面をしろ!動くな!」
運転手「列車強盗か!?」
ドク「いいや、科学の実験だ!このまま走らせて引き込み線のすぐ手前で止めろ!」
マーティ「オッケー!」
ドク「後ろの貨車を切り離せ!…いっぺんコイツを鳴らしてみたかったんだ」
マーティ「ねぇドック、コレ何?」
ドク「いってみりゃインスタント花火だ、無煙炭の粉を木の中に詰めて高温で長く燃えるようにしてある。鍛冶屋をやりながら身についた知恵だよ。コイツを一つずつ釜の中に放り込めば連続して高温が保てる。ボイラーの圧力が上がりスピードが出る」
マーティ「準備完了!」
クララ「エメットー!」
ドク「マーティ、タイムサーキットはセットしたか?」
マーティ「スイッチ ON!」
ドク「目的地の時間をセットしろ、1985年10月27日、午前11時」
マーティ「了解!セット完了!現在25マイルで安定走行中!」
ドク「インスタント花火を放り込むぞ!マーティ、ダッシュボードにセットしてある計器にボイラーの温度が出る。花火が火を吹いた瞬間が色で分かるはずだ。緑、黄色、赤、一つ発火するたびに急激な加速が伴うからそのつもりでいろ。その針が2,000を超えるまでに時速88マイルに到達してくれることを祈ろう」
マーティ「何で?針が2,000を超えたらどうなるの?」
ドク「ボイラーごと機関車は爆発だ!」
マーティ「本当!?」
クララ「あぁーっ!」
マーティ「ドック、時速35マイルまで上がったよ」
ドク「よし、私もそっちに乗り移る!」
クララ「エメット!エメットー!」
マーティ「頑張ってドック…。どこかに掴まって、黄色の花火がじきに爆発するよ!」
クララ「わぁー!何なの…」
マーティ「時速40マイル突破!」
クララ「エメットー!」
マーティ「もう時速45マイルを超えたよ、ドック急いで!…50マイル」
クララ「エメット!」
ドク「クララー!」
クララ「愛してるわ!」
マーティ「ドック、何があったの?」
ドク「クララだ、機関車に乗っている」
マーティ「クララが!?ご立派!」
ドク「機関車にいるんだ、コレから戻って連れて来る!」
マーティ「風車だ!ドック、風車を過ぎたよ、50マイル超えてる、今からじゃもう止められない!」
ドク「一緒に未来へ連れて行くしかないな!速度を読み上げてくれ!クララ、外へ出てこっちへ来るんだ!」
クララ「行けるかどうか分からない」
ドク「君ならやれる、下を見ないで!さぁ、おいで!」
マーティ「60マイル超えたよドック!」
ドク「良いぞその調子だ、一歩ずつゆっくり!頑張れ!もう一息だ」
クララ「ダメ、もう怖くて進めない!」
マーティ「70マイル突破!」
ドク「そのまま進んで、良いぞー、慌てずゆっくり、下を見ないでそのまま…」
マーティ「ドック、赤い花火が爆発する!掴まれー!」
クララ「キャー!」
ドク「クララー!」
クララ「ねぇ掴まえてー!」
ドク「手に掴まれー!」
マーティ「ドック、ホバーボードをそっちに飛ばすから!」
ドク「マーティ危ない!」
マーティ「うわぁ!」
クララ「あーっ!エメット助けて!」
ドク「待ってろクララ!」
マーティ「ドック行くよ、ほら掴まえて!よし、やった!」
クララ「エメット!」
マーティ「よぉし!」
※ イーストウッド峡谷
※ ヒルデール団地
マーティ「ハッ…くそっ…開け、早く…!うわぁ!…ドック、マシンは破壊されたよ…ドックの望み通りに…」
※ リヨン団地
ビフ「おい、お前何だ!」
マーティ「何だよいきなり!」
ビフ「あぁマーティ坊っちゃん!そんなの着てるからちょっと分からなかったんですよぉ」
マーティ「何やってんだよ」
ビフ「今ワックスの二度目をかけてるところです。カウボーイスタイル?」
デイブ「早くして、遅れちゃうよ」
リンダ「予約がキャンセルになっちゃうわよ」
ロレイン「あらマーティ、湖に行ったんじゃなかったの?」
リンダ「ちょっと何その格好」
マーティ「みんなまともに戻ったんだね…」
デイブ「お前それ、クリント・イーストウッドのつもりか?」
マーティ「あぁ…そうだ、ジェニファーのところに行かなきゃ」
ビフ「その帽子良いっすよ」
マーティ「ありがとビフ。…ジェニファー。起きて」
ジェニファー「マーティ…。マーティ!すっごく変な夢見ちゃった。本当のことみたいにすっごくハッキリしてるの。未来の私達、結婚してて、あなたがクビになっちゃうの」
マーティ「何で僕がクビになるのさ。…ヒルデール…。ココに住んでたんだ僕達…。…あ、いや、その、二人でココに住むかもしれないなーって、いつかね…」
ジェニファー「マーティ、アレは夢だったのよね、そうでしょ?」
ニードルス「おぉーい、誰かと思ったらマーティじゃねえか。元気してるかマクフライ?」
マーティ「やぁニードルス」
ニードルス「ゴキゲンなクルマに乗ってんなー、出足の良いとこ見せてみろよ、信号変わったら!」
マーティ「そんな気ないね」
ニードルス「どうしたおい…腰抜けか!?」
ニードルスの手下「あいつビビってやんの、マクフライは腰抜けだ~」
ジェニファー「マーティ止めて」
マーティ「しっかり掴まってろ…」
ニードルス「行くぞオラー!」
ジェニファー「わぁっ!…今のわざとやったの?」
マーティ「あんなヤツらと張り合うほどガキじゃないよ。…うわぁ、僕がアレに突っ込んでたところだ…」
※ お前はクビだ
ジェニファー「字が消えたわ。…本当にバラバラになっちゃったのね」
マーティ「ドックはもう帰って来ないや。もう二度と会えない…。…列車は来てないのに…?うわぁー!…ドック!」
ドク「マーティ!凄いだろ、今度は蒸気で動くんだよ!家族を紹介しよう。クララは知っているな」
クララ「ハーイ、マーティ」
マーティ「こんちは!」
ドク「それから子供達だ。ジュールに、ヴェルヌ。ご挨拶して、マーティとジェニファーだ」
マーティ「もう二度と会えないかと思ったよ」
ドク「科学者は簡単にはくたばらんさ。アインシュタインが気になって連れに来たんだ。それに君が心配してると思ってね。あぁそうそう、君に良い土産を持って来たぞ」
マーティ「凄いやドック…!ありがとう」
ジェニファー「ねぇドック、未来からこのメモを持って来たんだけど、字が消えちゃったの」
ドク「そりゃ消えて当然だ」
ジェニファー「どういうことですか?」
ドク「君達の未来はまだその紙のように真っ白ってことだ。誰の未来もな。未来は君達自身で作るんだ。素晴らしいモノにしなきゃ、君達二人で」
マーティ「きっとそうするよ」
ドク「さぁ下がって!子供達、出発だ!」
マーティ「ドック、コレからどこに行くの?また未来へ?」
ドク「いや、もう行って来たよ」
※ The End